医療情報について: このページは、家庭で確認しやすい一般的な情報を整理したものです。診断・治療の代わりにはなりません。
赤ちゃんが授乳を嫌がる、ぐったりしている、体温38度以上(生後3か月未満なら37.5度以上)の場合は、119番、救急受診、または地域の子ども医療電話相談 #8000 などへ早めに相談してください。
要点: 粉ミルクの安全な調製は①70度以上のお湯で溶かす②規定量を守る③冷ましてから与える④2時間以内に使い切る——の4点が基本です。WHO・厚労省のガイドラインでは、70度以上のお湯を使うことでサカザキ菌などのリスクを大幅に下げられると示されています。
「ミルクの作り方、これで合っているかな」——特に育児を始めたばかりのころは、細かいところが気になりますよね。
粉ミルクは正しく調製することで、赤ちゃんに安全に栄養を届けられます。病棟での経験と、WHOや厚労省のガイドラインをもとに整理しました。一緒に確認してみましょう。
調製前の準備——清潔が最優先
ミルクを作る前に必ずやること、それは手洗いです。石鹸で20秒以上しっかり洗いましょう。
また、以下の点も事前に確認してください。
- 調製台を清潔にする: キッチンペーパーなどで拭き取るか、消毒スプレーで清潔にしておく
- 消毒済みの哺乳瓶を用意する: 消毒後の哺乳瓶は内側に手が触れないように扱う
- 湯を沸かしておく: WHOガイドラインでは、粉ミルクの調製に70度以上のお湯を使用することが推奨されています
まろんの臨床メモ: 「一度沸騰させたお湯を70度に冷ましてから使う」方法が安全です。電気ケトルで沸騰後、30分以内に使えば70度以上を保てることが多いですが、ケトルの機種によって異なります。「保温70度」機能があるものは便利です。
なぜ70度以上のお湯が必要なのか
粉ミルクは製造・流通の過程で、エンテロバクター・サカザキ菌という細菌が極微量混入する可能性があることが知られています。この菌は新生児・未熟児に重篤な感染症を引き起こす場合があります。
70度以上のお湯を使うことで、この菌を死滅させられることがWHOのガイドライン(2007年)で示されています。特に新生児期・低出生体重児・免疫が低下している赤ちゃんでは、70度以上の使用を徹底することが重要です。
粉ミルクの正しい作り方——手順を確認する
基本的な作り方の手順です。ミルク缶に記載されている量・スプーンの使い方は缶ごとに異なるため、必ず購入したミルク缶の説明書を確認してください。
- 必要量を確認する: 月齢・体重に合わせたミルク量(ミルク缶に目安が記載されています)を確認する
- お湯を哺乳瓶に入れる: 最終的に作りたい量の約2/3程度の70度以上のお湯を先に入れる
- 粉ミルクを計量する: 付属のスプーンで正確にすり切り1杯ずつ計量する。スプーンは乾燥した清潔なものを使う
- 粉を入れて溶かす: ミルク缶の指示量の粉を入れ、哺乳瓶を振って完全に溶かす
- 最終量に合わせる: 溶けたら残りのお湯(または冷ました湯冷まし)を加えて目標量に合わせる
- 適温に冷ます: 流水または冷水の入った容器で哺乳瓶を冷やし、手首の内側に数滴たらして「人肌(37〜40度)」になったことを確認する
- すぐに与える: 調製後は2時間以内に使い切る
ミルクの量と濃さ——規定を守ることが大切
「もっとたくさん飲ませたい」「薄めにしたほうがいいかな」と思うことがあるかもしれません。しかし、ミルクの濃度を変えることは推奨されていません。
- 濃くすると: 腎臓や消化器に負担がかかる場合があります
- 薄くすると: 必要な栄養が取れない、体重増加不良につながることがあります
缶に記載された規定量を守って調製しましょう。量が足りない・多すぎると感じる場合は、かかりつけの小児科に相談してください。
作り置きについて——基本は「その都度作る」
WHOのガイドラインでは、ミルクはその都度作ることが最も安全とされています。
- 調製後のミルクは室温では2時間以内に使い切る
- 冷蔵庫保存の場合は24時間以内(ただし一度温めたものは再加熱しない)
- 電子レンジでの加熱は不均一な温度むらが生じるため推奨されていません。流水または湯煎で温める
粉ミルクの種類——粉とキューブ
市販の粉ミルクには大きく「粉タイプ」と「キューブタイプ」があります。
- 粉タイプ: 量の調整がしやすい。コスパがよい。スプーンですくう手間がある
- キューブタイプ: 計量が不要で外出時に便利。1個あたりの量が固定されているため細かい調整が難しい
いずれも成分に大きな差はありません。生活スタイルに合ったものを選んでください。
【授乳・ミルクに関する受診判断の目安】
- 🚨 今すぐ受診・119番
- 授乳を受け付けず、ぐったりして動かない
- 体温38度以上(生後3か月未満は37.5度以上)でぐったりしている
- 唇が紫色になっている、呼吸が苦しそう
- ⚠️ 早めに受診(当日中)
- ミルクを吐き続けている(噴水様に飛ぶ)
- 体重が増えていない、減っている(乳児健診や家での計測で確認)
- 1日の授乳回数が急に減った
- 📅 次の受診時・電話相談
- ミルクの量や回数について相談したい
- 混合授乳の割合について迷っている
- ミルクの銘柄を変えてよいか確認したい
迷ったときは、まず #8000(こどもの救急電話相談) へ。遠慮なく相談してください。
よくある疑問——Q&A
沸かしたお湯を70度まで冷ます時間の目安は?
一度沸騰させたお湯を魔法瓶(保温ポット)や電気ケトルに入れてから30分以内に使えば、70度以上を保てることが多いです。ただし容器の性能によって異なるため、温度計で確認するか、「保温70度」機能のあるケトルを使うと確実です。
余ったミルクは次の授乳に使えますか?
飲み残したミルクは使い回しません。口をつけた哺乳瓶内のミルクは細菌が増殖しやすいため、残ったものは廃棄してください。作り置き(冷蔵)は飲み口に触れていない状態であれば24時間以内なら使用できますが、一度温めたものの再加熱は避けてください。
調乳用の水道水をそのまま使ってもよいですか?
日本の水道水は安全性が確認されており、一度沸騰させてから使えば問題ありません。ミネラルウォーターを使う場合は軟水を選び、同様に沸騰させてください。硬水は腎臓への負担になる可能性があるため避けることが望ましいです。
まとめ——「清潔・正確・すぐ与える」が基本
粉ミルクの調製で大切なのは、①手洗いと清潔な器具の使用、②70度以上のお湯で溶かす、③規定量を守る、④調製後2時間以内に使い切る——この4点です。
育児が始まったばかりのころは覚えることが多くて大変ですが、一つひとつ確認しながら進めていけば大丈夫です。わからないことは乳児健診や小児科外来で気軽に聞いてください。
参考文献
- WHO「乳児用調製粉乳の安全な調製、保存および取り扱いに関するガイドライン」(2007年)https://www.who.int/publications/i/item/9789241594134
- 厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_04250.html
- 内閣府食品安全委員会「乳幼児食品の安全性について」https://www.fsc.go.jp/


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