夜中、赤ちゃんが急に吐いた。下痢が何度も続いて、おむつ替えが追いつかない——。「このままじゃ脱水になっちゃう」「水分、どうあげればいいの」、頭の中はぐるぐるしますよね。
わかります。私自身、小児科で胃腸炎のお子さんに何度も付き添ってきましたが、それでも親としては、夜の脱水が一番こわいんです。とくに乳幼児は体に占める水分の割合が大きく、ぐったりしてからは進みが早いと言われています。
でも、家庭で確認できるサインと、経口補水液の与え方の手順を知っていれば、落ち着いて向き合えます。この記事では、脱水のチェックポイント、5mLずつ5分おきの与え方、すぐ受診すべき目安まで、一緒に整理していきますね。
医療情報について: このページは、家庭で確認しやすい一般的な情報を、学会ガイドラインに沿って整理したものです。私は看護師であり、医師ではありません。診断・治療の代わりにはなりません。
意識がはっきりしない/けいれん/呼吸が早く荒い/手足が冷たくまだら/大泉門(おでこの上の柔らかい部分)が深くへこむ/泣いても涙が出ない/12時間近くおしっこが出ない/繰り返す胆汁性(黄緑色)の嘔吐——こうしたときは、ためらわず119番へ。判断に迷うときは、子ども医療電話相談 #8000 にも相談できます。
要点: 乳幼児の脱水は「単独のサインより複数の組み合わせ」で見ます。家庭で見るのは①おしっこの回数(6時間以上濡れない/12時間出ないは要注意)、②大泉門のへこみ、③涙の有無、④顔色・手足の冷たさ、⑤元気・反応。経口補水液は5mLを5分おきから少量頻回で。意識障害・けいれん・繰り返す嘔吐・大泉門陥凹は119。生後3ヶ月未満は早めに受診してください。
そもそも乳幼児はなぜ脱水になりやすいの?
赤ちゃんや小さなお子さんは、体に占める水分の割合が大人より大きく、嘔吐・下痢・発熱で水分を失うと、短時間で全身に影響が出やすいんです。 新生児では体重の約8割、乳児でも約7割が水分と言われています(MSDマニュアル プロフェッショナル版(日本語))。
さらに、自分で「のどが渇いた」「お水がほしい」と伝えられないこと、汗や呼吸からの水分蒸発が大人より多いことも理由です。だからこそ、保護者さんが「いつもと違う」「おしっこが減った」に早く気づいて、水分をちびちび補ってあげることが大切なんですね。
家でできる脱水サインのチェックリストは?
脱水のサインは一つだけで判断せず、「おしっこ・大泉門・涙・顔色・元気」を組み合わせて見ます。 単独の指標より、複数の所見が重なるほど脱水の可能性が高くなるとされています(MSDマニュアル プロフェッショナル版(日本語))。
家庭で見るときの目安を、順番に整理しますね。
おしっこ・うんちで見る
- 回数の目安: 通常は1日6回以上、色は無色〜薄いレモン色とされます。
- 6時間以上おむつが濡れないときは、水分が足りていない可能性。
- 12時間近く出ない/濃い黄色や茶色のときは、早めに相談してください。
- 下痢が続くときは、回数・性状(水様・粘液・血便)もメモしておきましょう。
顔・体で見る
- 大泉門(赤ちゃんのおでこの上の、ぺこっと柔らかい部分)がふだんより深くへこむ。
- 泣いても涙が出ない、口の中・唇が乾いている。
- 顔色が悪い・手足が冷たくまだら、肌の張り(ツルゴール)が戻りにくい。
- 目が落ちくぼんで見える。
元気・反応で見る
- 呼びかけへの反応が鈍い、ぐったりして眠りがち。
- 抱っこしてもぐずらない、いつもの泣き方ではない。
これらが複数当てはまるときは、家庭での経口補水だけで様子を見ず、受診を検討してください。
脱水の重症度はどう見分ける?
医療現場では、体重の減少率を目安に「軽度3〜5%」「中等度5〜8%」「重度10%以上」と分類するのが一般的です。 家庭では体重まで測らなくて大丈夫ですが、症状の段階を知っておくと、受診の判断がしやすくなります(MSDマニュアル プロフェッショナル版(日本語))。
- 軽度脱水(3〜5%): 口・唇が少し乾く/おしっこの色が濃い/元気はある。家庭での経口補水液で対応できることが多いとされる段階。
- 中等度脱水(5〜8%): 涙が減る/大泉門がややへこむ/脈が速い/皮膚の張りが戻りにくい。早めに受診を検討。
- 重度脱水(10%以上): ぐったり・反応が鈍い/手足が冷たくまだら/呼吸が早く荒い/血圧低下のサイン。ためらわず救急受診(119番)。
まろんの臨床メモ: 小児科では、脱水評価のときに「最後におしっこが出た時刻」「最後に水分を飲めた時刻と量」「嘔吐・下痢の回数」を必ず確認します。ご家庭でも、おむつ替えの時刻と量、与えた水分(mL目安)、嘔吐の回数を、スマホのメモにポチポチ残しておくと、受診のときに先生に伝えやすくなります。完璧でなくて大丈夫。「だいたいの数字」が、お子さんを守る材料になります。
経口補水液はどうやって与えればいい?
結論は「5mLを5分おき」から始める少量頻回がコツです。 いきなり多く飲ませると吐き戻して、せっかくの水分が出てしまいます。日本小児急性胃腸炎ガイドライン2017では、脱水なし〜中等度脱水の初期治療として、経静脈輸液より経口補水療法が推奨されています(Mindsガイドラインライブラリ 小児急性胃腸炎診療ガイドライン2017)。
嘔吐がある子への手順——5mL×5分おき
①スプーンやスポイトで5mL(ティースプーン1杯ほど)を口に含ませる。
②5分待って、吐かなければ次の5mL。
③吐いてしまったら、5〜10分休んでから5mLを再開。
④1時間で約60mLずつ進めるイメージ。落ち着いてきたら少しずつ間隔・量を増やします。
吐き気が強い間は焦らなくて大丈夫。「1滴も飲めない」「飲ませてもすぐ吐く」が続くときは、家庭での補水を粘らず受診してください(小児急性胃腸炎と経口保水療法 — 新百合ヶ丘総合病院 薬剤部)。
軽症のときの追加水分
下痢や嘔吐があった日は、その都度の補充も意識します。海外の小児科レビューでは、2歳未満で軽度脱水の児には、嘔吐や下痢1回ごとに50〜100mLを追加するという目安が示されています(Oral Rehydration Salt Solutions for Children: A Review — AAP Pediatrics in Review (2025))。
経口補水液の年齢別の量と製品の違いは?
経口補水液は3種類(OS-1、アクアライト、アクアソリタ)でナトリウム濃度や推奨月齢が違います。 とくにOS-1は「医師の指導のもとで使用すべき病者用食品」と公式に位置付けられており、乳児に使う場合はかかりつけ医に相談するのが基本です(OS-1(オーエスワン)シリーズ — 株式会社大塚製薬工場)。
OS-1の目安量(公式表記)
製造販売元の表記では、次の量が目安として示されています。
- 乳児: 体重1kgあたり30〜50mL/日(医師の指導下で)
- 幼児: 300〜600mL/日
- 学童〜成人: 500〜1,000mL/日
例えば体重8kgの乳児なら、1日240〜400mLが目安。これを5mL刻みで少量頻回に与えていく計算になります。
製品の選び方
- OS-1: ナトリウム濃度がやや高め(医療用相当)。乳児は医師に相談してから。
- アクアライトORS/アクアソリタ: ナトリウム濃度が低めで、軽度脱水や予防的な水分補給で広く使われています。乳児向け表示の製品もあります。
- WHOが推奨する低浸透圧ORSは、ナトリウム60〜90mEq/L・総浸透圧200〜310mOsm/Lが国際基準とされています(WHO Oral Rehydration Salts)。
迷うときは、まずかかりつけの小児科や薬剤師さんに「うちの子の月齢で、どれを使えばいいですか」と確認してくださいね。
水・お茶・ジュース・スポーツドリンクではダメなの?
水・お茶だけだと電解質(ナトリウム)が足りず、ジュース・スポーツドリンクは糖分が多すぎて下痢を悪化させたり、ナトリウムが低すぎることがあるためです。 経口補水液は「水+塩+少量の糖」を吸収しやすい比率に調整した飲み物で、ただの水分とは役割が違います。
- 水・麦茶のみ: 嘔吐・下痢で失う塩分(ナトリウム)が補えず、低ナトリウム血症のリスク。
- ジュース・果汁: 糖分が多く、浸透圧の関係でかえって下痢を強めることがあります。
- スポーツドリンク: ナトリウム濃度がおおむね21mEq/L程度と、経口補水液(WHO基準で60〜90mEq/L)より大幅に低いため、補正には不向きとされています(小児急性胃腸炎と経口保水療法 — 新百合ヶ丘総合病院 薬剤部)。
「のどが渇いた」と泣いている軽い場合に、母乳・ミルク・湯冷ましを与えるのは問題ありません。ただし嘔吐・下痢が続いて脱水が疑われる場面では、経口補水液を優先してくださいね。
今すぐ救急?朝まで様子見?月齢別の受診目安
生後3ヶ月未満は「様子見」しないでください。それ以外でも、意識・呼吸・大泉門・嘔吐の性質で判断します。 日本小児科学会監修の こどもの救急ONLINE-QQ では、症状別の受診目安が公開されています。家庭での判断は、次のチェックを目安にしてください。
【乳幼児の脱水 受診判断チェック】
- 🚨 今すぐ119番(救急車)/救急受診
- 意識がはっきりしない/呼びかけに反応が鈍い/けいれん
- 呼吸が早く荒い、手足が冷たくまだら、唇や顔色が紫っぽい
- 大泉門が深くへこむ/泣いても涙が出ない
- 12時間近くおしっこが出ない
- 繰り返す胆汁性(黄緑色)の嘔吐/血便
- 生後3ヶ月未満で38℃以上の発熱を伴う
- ⚠️ 早めに受診(当日中〜翌朝一番)
- 6時間以上おむつが濡れない
- 1滴も水分が飲めない/飲ませてもすぐ吐く
- ぐったりして元気がない、機嫌が戻らない
- 嘔吐・下痢が半日以上続いている
- 3〜26ヶ月で39℃以上の発熱を伴う
- 📅 家庭で経口補水を続けながら様子見でよいことが多い
- 元気があり、おしっこも出ている
- 経口補水液をちびちび飲めている
- 嘔吐・下痢の回数が少なく、徐々に落ち着いてきた
迷ったら #8000(子ども医療電話相談) へ。「これくらいで呼んでいいのかな」とためらわなくて大丈夫です。
家庭でできる予防と回復食はどうすればいい?
予防は「こまめな水分補給」と「環境調整」、回復食は「お腹に優しいものから少しずつ」が基本です。 嘔吐・下痢がおさまってきたら、絶食を続けずに、消化のよいものから食事を再開すると回復が早いとされています。
予防のポイント
- 夏場や暖房時は室温26〜28℃・湿度50%前後を目安に。
- 母乳・ミルクはいつも通り続ける(脱水時は授乳間隔を短めにすることも検討)。
- 発熱時は普段より多めにこまめに水分を促す。
回復食(嘔吐・下痢が落ち着いてきたら)
- 乳児: 母乳・ミルクをいつも通り。離乳食はおかゆ・すりつぶした野菜から。
- 幼児: おかゆ・うどん・バナナ・りんごのすりおろしなど消化のよいものを少量から。
- 避けたいもの: 揚げ物・脂っこいもの・乳製品(種類による)・冷たいジュース。
無理に食べさせず、お子さんが欲しがる範囲で。1〜2食抜けても、水分が摂れていれば過度に心配しすぎなくて大丈夫と言われています。
受診のとき、何を伝えればいい?
「最後におしっこ/水分/食事が摂れたのはいつか」「嘔吐・下痢の回数と性状」「いつから始まったか」をメモで伝えると、診察がスムーズです。 動揺していて当然なので、思い出せる範囲でかまいません。
- 症状が始まった時刻と、いつから何が出ているか
- 嘔吐の回数・色(黄緑色=胆汁性かどうか)
- 下痢の回数・性状(水様/粘液/血便)
- 最後に水分を飲めた時刻と量
- 最後におしっこが出た時刻と量・色
- 体温の推移
- 既往(基礎疾患・アレルギー・服薬)
スマホのメモや、嘔吐物・便の写真(おむつのまま)を見せるだけでも十分です。
まとめ — 一人で抱え込まず、迷ったら相談を
赤ちゃんやお子さんの嘔吐・下痢は、夜になると本当に不安が大きくなりますよね。
家庭で見るのは——おしっこ・大泉門・涙・顔色・元気の5点。経口補水液は5mLを5分おきから少量頻回で。そして意識障害・けいれん・繰り返す嘔吐・大泉門陥凹・12時間以上おしっこなしは迷わず119番、生後3ヶ月未満の発熱・下痢は様子見しない。
腎臓・心臓・糖尿病などの基礎疾患があるお子さんは、ナトリウムや糖の量が体調に影響することがあるので、必ず主治医に確認してくださいね。
一人で抱え込まなくて大丈夫です。迷ったら#8000やかかりつけ医に頼ってください。あなたは十分がんばっています。
OS-1は赤ちゃんに飲ませても大丈夫ですか?
OS-1は「医師の指導のもとで使用する病者用食品」と公式に位置付けられています。乳児への使用は、まずかかりつけの小児科や薬剤師に相談してください。軽い脱水予防にはアクアライトORSやアクアソリタといった低ナトリウムタイプの製品が使われることもあります。
何回吐いたら受診したほうがいいですか?
回数だけで決めるより、「1滴も水分が飲めない」「飲ませてもすぐ吐く」が続くとき、または胆汁性(黄緑色)の嘔吐を繰り返すときは早めに受診してください。生後3ヶ月未満は、嘔吐や発熱があれば回数に関係なく早く相談を。
おしっこが出ないと脱水ですか?
6時間以上おむつが濡れないと水分不足の可能性、12時間近く出ないときは早めに相談してください。ただし夏場の発汗や授乳直後など状況にもよるので、おしっこ単独ではなく、涙・大泉門・顔色・元気とあわせて判断するのが目安です。
水分が飲めないとき、おしりから水分を入れるなどの方法はありますか?
家庭でできるのは、口からのちびちび補水と、症状観察まで。点滴や輸液が必要な場合は医療機関での処置になります。「1滴も飲めない」が続くときは粘らず受診してください。
経口補水液をお茶や水で薄めてもいいですか?
薄めると電解質や糖の濃度バランスが崩れ、本来の吸収効率が落ちます。基本はそのまま、製品の表示通りに与えてください。味が苦手で飲めないときは、製品を変える、温度を変える(少し冷やす)などで工夫してみましょう。
参考文献


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