医療情報について: このページは、家庭で確認しやすい一般的な情報を整理したものです。診断・治療の代わりにはなりません。
ぐったりして動かない、唇や口の中が乾燥している、数時間おしっこが出ない、意識がぼんやりしているなどのサインがある場合は、119番、救急受診、または地域の子ども医療電話相談 #8000 へ早めに相談してください。
要点: 乳幼児の脱水は進行が早いため早期発見が重要です。家庭でのケアは①涼しい場所に移す②少量ずつこまめに水分を与える③経口補水液(ORS)を活用する——が基本。ぐったり・おしっこが出ない・唇が乾燥しているサインが出たら早めに受診してください。
「子どもが嘔吐や下痢を繰り返していて、脱水が心配——」。夏の暑い日だけでなく、胃腸炎のシーズンにも多くいただく相談です。
乳幼児は体重に対する水分の割合が大人より高く、短時間で脱水が進みやすい特徴があります。早いうちに気づいて対処できるよう、一緒に確認してみましょう。
乳幼児が脱水になりやすい理由
子どもが脱水になりやすい背景には、体の特徴があります。
- 体内の水分比率が高い: 新生児では体重の約75〜80%が水分(成人は約60%)。そのぶん、失われたときの影響が出やすい
- 体表面積が体重に対して大きい: 皮膚からの水分蒸発量が多い
- 自分で水分を取れない: 乳児は自分でコップを使えず、保護者が気づかないと補給が遅れる
- 発熱・嘔吐・下痢での喪失が大きい: 胃腸炎シーズンや夏季に特に注意が必要
脱水のサインを確認する——家庭で見るポイント
日本小児体液研究会の資料をもとに、脱水のサインを整理します。初期は症状がわかりにくいため、普段との変化に気づくことが大切です。
軽症〜中等症の目安(家庭で観察できる項目)
- 口・唇が乾燥している(唾液が少なく、口の中がネバネバする)
- おしっこの回数が減っている(目安:乳児で4時間以上、幼児で6時間以上出ていない)
- おしっこの色が濃い黄色になっている
- 機嫌が悪い、ぐずぐずしている
- 泣いても涙が出ない
- 皮膚をつまむと戻りが遅い(ツルゴール低下)
- 乳児の場合、大泉門(頭の上のやわらかい部分)が凹んでいる
まろんの臨床メモ: 病棟でよく確認するのは「おしっこの出具合」です。おむつが半日以上濡れていない、または尿の色がオレンジ色に近いときは脱水が進んでいるサインです。体重を毎日計測している場合は、前日より急激に減っていないかも確認してみてください(急激な体重減少は水分不足を反映します)。
家庭でできる脱水ケア——水分補給の基本
軽症の脱水であれば、家庭での水分補給(経口補水療法)で回復できることがあります。WHO・日本小児体液研究会も経口補水療法(ORT: Oral Rehydration Therapy)を推奨しています。
経口補水液(ORS)を活用する
経口補水液(OS-1・アクアライトORSなど)は、水とナトリウム・ブドウ糖のバランスを最適化した補水飲料です。スポーツドリンクや普通のジュースより吸収が速く、胃腸炎による脱水の補水に適しています。
- スポーツドリンクとの違い: スポーツドリンクはナトリウム濃度が低く、糖質が多い。下痢が続くと悪化させることがあるため、脱水ケアには経口補水液を使う
- 水・麦茶だけでは: 電解質が不足するため、嘔吐・下痢が続く場合は経口補水液が適切
水分補給の与え方——少量・こまめが基本
嘔吐や下痢の直後は、一度に多量に与えると再び嘔吐することがあります。
- 嘔吐後は5〜10分待ってから再開する
- 最初はティースプーン1杯程度(5ml)から始める
- 5〜10分おきに少量ずつ与えていく
- 嘔吐せずに飲めたら、少しずつ量を増やす
乳児では母乳・ミルクを続けながら経口補水液を補助的に使う方法が基本です。授乳の中断は不要です。
年齢別の補水量の目安
日本小児体液研究会の経口補水療法ガイドを参考にした目安量です。あくまで目安であり、個人差があります。
- 乳児(〜1歳未満): 体重1kgあたり50〜100ml/時間を目安に(症状の程度により異なります)
- 1〜5歳: 体重1kgあたり50ml/時間を目安に少量ずつ
正確な量はかかりつけ医に確認してください。補水が追いつかない場合や飲めない場合は点滴が必要になるため、早めに受診を検討してください。
環境と体温管理——脱水を防ぐためにできること
- 涼しい場所に移す: 室温は26〜28度を目安に。エアコンや扇風機を使い、直射日光を避ける
- 薄着にする: 体温が高い場合は服を一枚脱がせて熱を逃がしやすくする
- 首・脇・足の付け根を冷やす: 熱が高い場合の応急処置として効果的
- 普段から水分を意識する: 夏季・入浴後・外遊び後はこまめに水分を与える習慣をつけておく
【脱水のサイン——受診判断の目安】
- 🚨 今すぐ受診・119番
- ぐったりして呼びかけへの反応が弱い
- 唇・口の中が極端に乾燥している、涙が出ない
- 8時間以上おしっこが出ていない
- 意識がぼんやりしている、けいれんを起こした
- 生後3か月未満の乳児で嘔吐・下痢が続いている
- ⚠️ 早めに受診(数時間以内)
- 水分を与えても繰り返し嘔吐している
- 4〜6時間おしっこが出ていない
- ぐずりが続き、機嫌がとても悪い
- 体重が急激に減っている(前日比で5%以上の目安)
- 📅 様子を見ながら・電話相談
- 少量の下痢や嘔吐があるが、水分は取れている
- 機嫌は普通で、おしっこも出ている
- 補水のやり方について確認したい
迷ったときは、まず #8000(こどもの救急電話相談) へ。遠慮なく相談してください。
よくある疑問——Q&A
スポーツドリンクではダメですか?
スポーツドリンクは電解質(ナトリウム)が少なく、糖質が多いため、嘔吐・下痢が続く場合には脱水を悪化させることがあります。ケアには経口補水液(OS-1など)を使い、スポーツドリンクは水分補給の補助として使う程度に留めてください。
母乳を飲んでいる乳児でも経口補水液は必要ですか?
軽症であれば母乳を続けながら、補助として経口補水液を少量与える方法が基本です。授乳を中断する必要はありません。嘔吐が激しい場合やぐったりしている場合は受診してください。
経口補水液を飲んでくれない場合は?
味が苦手で飲まない子もいます。少量から試す、少し冷やして与える、スプーンやスポイトで少しずつ口に含ませるなどの方法を試してみてください。どうしても飲めない場合は点滴が必要なこともあるため、かかりつけ医に相談してください。
脱水と熱中症の違いは何ですか?
熱中症は高温環境で体温調節がうまくいかなくなった状態で、脱水はその一因です。脱水は胃腸炎・発熱などでも起こります。どちらも水分・電解質の補給と涼しい環境への移動が基本ですが、意識障害・体温40度以上などの重症サインがある場合はすぐに119番に連絡してください。
まとめ——早めに気づいて、少量ずつ補う
乳幼児の脱水は進行が早く、気づいたときには中等症になっていることがあります。日頃からおしっこの回数・色・機嫌を確認する習慣をつけておくと、変化に早く気づけます。
軽症であれば経口補水液を少量ずつこまめに与えることで家庭で対処できますが、ぐったりしている・水分が取れないサインが出たら早めに受診してください。
不安を一人で抱えなくて大丈夫です。迷ったら#8000、または夜間でも救急外来に相談してください。
参考文献
- 日本小児体液研究会「脱水に対する輸液療法」http://www.jspfe.jp/doc/vol12_2020_03ml.pdf
- WHO「経口補水療法(ORT)に関するガイドライン」https://www.who.int/publications/i/item/9789241542685
- 厚生労働省「熱中症予防のための情報・資料サイト」https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuusho/

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