「自分でやる」と言ったのに、できなくて大泣き。さっきまで「これがいい」と言っていたのに、出したら「ちがう」とひっくり返る——。何を出しても「イヤ」と返ってくる毎日に、どう関わればいいのか、戸惑ってしまいますよね。
とくに、外出先や急いでいるときにスイッチが入ると、こちらまで泣きたくなるものです。「私の育て方が悪いのかな」と、自分を責めてしまう保護者さんも少なくありません。でも、それは育て方のせいではないんです。
まず、怖がりすぎなくて大丈夫です。イヤイヤ期は、お子さんの心が順調に育っているサインでもあります。この記事では、時期の目安と、家庭でできる関わり方のコツ、そして「ちょっと気になるな」というときの相談先まで、公的なガイドラインをもとに一緒に整理していきますね。
医療情報について: このページは、家庭で関わるときのヒントを、保育所保育指針(厚生労働省)や国立成育医療研究センターの研修教材など、公的な情報をもとに整理した一般的な情報です。私は看護師であり、医師ではありません。診断・治療の代わりにはなりません。発達には大きな個人差があります。この記事の月齢や目安は「平均的なめやす」であって、合否を決めるものではありません。
気になることがあるときの相談先は、ひとつではありません。かかりつけの小児科、1歳6か月児健診・3歳児健診、地域の保健センターや子育て・発達相談の窓口が、最初の相談先になります。お住まいの地域には、母子保健と児童福祉が一体で相談にのるこども家庭センターもあります。発達障害かどうかをこの記事で判断することはできません。気になるときは、ひとりで抱えず相談してくださいね。なお、急な発熱や体調の急変で迷うときは、子ども医療電話相談 #8000 も使えます。
要点: イヤイヤ期は自我の芽生えで、1歳半頃から始まり2歳頃にピーク、3〜4歳で落ち着く傾向があります(個人差大)。家庭で大切なのは3つ。①気持ちを言葉にして受け止める(「イヤだったね」)、②どちらもOKな選択肢を2つ出す、③安全なら、やりたい気持ちを見守る。脅し・怒鳴りは避け、保護者さん自身の休息も大切にしてください。
イヤイヤ期って何?自我の芽生えという発達の証
イヤイヤ期は、「自分でやりたい」「自分で決めたい」という気持ちが育ってきた証で、発達のうえでとても大切な時期です。 困った行動に見えても、心が順調に育っているサインなんですね。
国の保育所保育指針(平成29年・厚生労働省告示)でも、1歳以上3歳未満の時期について、「自我の育ちの表れとして、強く自己主張する姿が見られる」と書かれています(保育所保育指針/厚生労働省)。つまり、強く「イヤ」と主張するのは、発達の自然な姿として国の指針にも位置づけられているんです。
同じ指針を月齢で見ると、「おおむね1歳3か月から2歳未満」のところで、自己主張が強く出てくる姿が示されています。生まれてからずっと「お世話される側」だったお子さんが、「自分」という存在に気づき、世界を自分で動かしてみたくなる。その芽生えが、ちょうどこの時期なんですね。
だから、「イヤ」は反抗ではなく自立への一歩と言われています。第一次反抗期と呼ばれることもありますが、大人に逆らいたいわけではありません。「自分でやってみたい、でもうまくできない」——その葛藤が、あの大泣きの正体です。そう思うと、少しだけ見方が変わりませんか。
イヤイヤ期はいつから始まって、いつ終わるの?
一般的には1歳半頃から自己主張が強まり、2歳頃にピーク、3〜4歳で落ち着いていく傾向があるとされています。 ただし、これはあくまで目安。始まりも終わりも、お子さんによってかなり幅があります。
公認心理師が監修した解説でも、イヤイヤ期は1歳半頃から始まって2歳頃にピークを迎え、3〜4歳で落ち着く傾向があり、個人差が大きいと紹介されています(子どものイヤイヤ期いつまで続く?/森ノ宮医療大学セラピア)。1歳前から始まる子もいれば、2歳を過ぎて本格化する子もいます。「うちは遅いかも」と焦らなくて大丈夫です。
月齢・年齢でみる目安(あくまで個人差あり)
- 1歳3か月〜2歳未満: 自己主張が出始める。保育所保育指針が「自我の育ちの表れ」とする時期
- 2歳頃: ピーク。「自分でやりたい」が強い一方、言葉でうまく伝えられず、葛藤が最大に
- 2歳半〜3歳頃: 言葉が2語文から3語文へ。気持ちを言葉で表せ始め、少しずつ落ち着く
- 3〜4歳頃: 感情のコントロールが育ってきて、イヤイヤがやわらいでいく
大切なのは、月齢の数字に一喜一憂しないこと。発達には大きな個人差があります。同じ2歳でも、激しい子もいれば穏やかな子もいて、どちらも自然です。終わりが見えにくく感じる時期ですが、多くのお子さんは成長とともに少しずつ落ち着いていきます。
なぜイヤイヤするの?子どもの脳と感情の発達から考える
「やりたい気持ち」は育っているのに、それを抑えたり言葉にしたりする力がまだ育ちきっていない——この発達のアンバランスが、イヤイヤの正体です。 わざと困らせているわけではないんですね。
感情や行動にブレーキをかける脳の働き(前頭前野と呼ばれる部分)は、3歳頃まで十分に育っておらず、4〜5歳頃から少しずつ機能し始めるとされています。つまり、2歳のお子さんが感情を自分でおさめられないのは、しつけ不足ではなく、脳の発達上、自然なことなんです。
そこに、もうひとつの要素が重なります。言葉です。「自分で靴をはきたい」「もっと遊びたい」という気持ちはあるのに、それをうまく言葉にできない。伝わらないもどかしさが、大泣きやかんしゃくという形であふれ出ます。2歳半頃から語彙が増えると、気持ちを言葉で出せるようになり、爆発が減っていくお子さんが多いです。
保育所保育指針も、思い通りにいかないときの不安定な気持ちについて、まわりの大人が「受容的に受け止める」とともに、そこから立ち直る経験や、感情をコントロールすることへの気づきにつなげていけるよう援助する、と方針を示しています(保育所保育指針/厚生労働省)。まずは受け止める——これが、専門の指針でも出発点とされているんですね。
家庭での関わり方のコツは?3つに整理します
ポイントは3つです。①気持ちを言葉にして受け止める、②どちらもOKな選択肢を2つ出す、③安全なら、やりたい気持ちを見守る。 どれも今日から試せる、シンプルな関わり方です。
保育所保育指針でも、子どもの自我の育ちを見守り、その気持ちを受け止めることが基本とされています(保育所保育指針/厚生労働省)。完璧にやろうとしなくて大丈夫。うまくいく日もいかない日もあって当たり前です。
① 気持ちを言葉にして受け止める
まずは、お子さんの気持ちを大人が言葉にしてあげましょう。「まだ遊びたかったんだね」「自分でやりたかったんだね」——そう代弁されるだけで、落ち着くお子さんは多いです。要求をすべて通す必要はありません。「気持ちは分かったよ」と伝えることが先で、できる・できないはそのあとです。
② どちらを選んでもOKな選択肢を2つ出す
「やりたい」「自分で決めたい」気持ちには、選ばせることがよく効きます。「赤と青、どっちのお洋服にする?」「お風呂、先に頭と体どっちから洗う?」のように、どちらを選んでも保護者さんがOKな2択を出します。自分で決めた感覚が満たされ、すんなり進むことがあります。
③ 安全が守れるなら、やりたい気持ちを見守る
危なくない・時間に余裕があるときは、少し待って、やらせてみるのも立派な関わり方です。自分でやってできた経験が、自信と次の成長につながります。とはいえ、毎回ゆっくり待つのは難しいですよね。急ぐときは①②で切り替え、余裕があるときは③、と使い分けて大丈夫です。トイレトレーニングのような「自分でやりたい」が出やすい場面では、トイレトレーニングの始め方と成功のコツ もヒントになります。
やりがちだけど避けたい対応とは?
「鬼が来るよ」「置いていくよ」といった脅しと、大人も一緒に怒鳴ってしまうこと——この2つは、できれば避けたい対応です。 ただ、やってしまっても自分を責めないでくださいね。誰にでもある反応です。
脅しや恐怖であおる言葉は、その場では効いても、お子さんの不安を高め、安心の土台をゆらがせてしまいます。また、大人が感情的に怒鳴ると、お子さんは「気持ちのおさめ方」を学ぶ機会を逃してしまいます。指針が大切にする「受け止め」とも、方向が逆になってしまうんですね。
とはいえ、保護者さんも人間です。カッとなりそうなときは、その場でひと呼吸。「今は落ち着こう」と心の中で唱えて、数秒だけ間を置く。それだけで、言葉が変わります。お子さんは、大人が落ち着きを取り戻す姿からも学んでいます。完璧な対応より、怒りすぎたあとに「言いすぎたね、ごめんね」と立て直せることのほうが、ずっと大切です。
まろんの臨床メモ: 健診や外来で「イヤイヤがひどくて」とご相談を受けるとき、私がよくお伝えするのは「かんしゃくが起きる前の流れ」を一度メモしてみることです。お腹がすいている・眠い・場所が変わった——爆発の前には、たいてい引き金があります。何時に、どんな場面で起きやすいかが見えると、先回りして声をかけたり、予定を少しずらしたりできます。完全には防げませんが、回数はぐっと減らせることが多いんです。それでも毎日くたくたで「もう限界」と感じるときは、対処が下手なのではなく、休息が足りていないサインかもしれません。そんなときこそ、健診や相談窓口を「弱音を吐く場所」として使ってくださいね。
【発達で相談を考えるときの目安】
下の区分は、あくまで相談のタイミングを考えるための目安です。発達障害かどうかを判断するものではありません。「気になる」と感じた時点で、いつでも相談していいんですよ。
- 🚨 気になるサインが続くなら、早めに専門相談へ
- かんしゃくのときに、頭を壁や床に繰り返し強くぶつける・自分を強く噛むなどの自傷がある
- 泣きすぎて呼吸が止まりそう・顔色が変わり失神しそうになる(強く泣いて息が止まるタイプの反応がある)
- 出ていた言葉が急に減った・消えたなど、発達の後戻りが気になる
- ⚠️ 次の乳幼児健診や相談窓口で相談を
- 強いかんしゃく・自傷・お友だちへの噛みつきや叩きが、1〜2週間以上続いて改善しない
- 言葉の遅れ(1歳半で意味のある言葉がない、2歳で2語文が出ない)や、目が合いにくい・名前を呼んでも振り向きにくいなど、対人面の気になることが重なる
- 4歳を過ぎても激しいイヤイヤが続き、保育園や日常生活に支障が出ている
- 保護者さん自身が毎日追い詰められ、限界を感じている
- 📅 もう少し様子を見てよい目安
- 1歳半〜3歳頃に起きるイヤイヤ・かんしゃく(回数や強さが、いつもの範囲)
- かんしゃくのあとは気持ちを切り替えられる・抱っこで落ち着く
- 好奇心は旺盛で、遊びへの集中はできている
- 保護者さんがコツをつかんで、少しずつ対処できている
相談先は、かかりつけの小児科、1歳6か月児・3歳児健診、地域の保健センターやこども家庭センターなどです。1歳半健診では、積み木・指差し・言葉などの発達を確認し、気になることがあれば保健師の相談につなげる流れがあります(乳幼児健康診査事業実践ガイド/厚生労働省)。「これくらいで相談していいのかな」と、ためらわなくて大丈夫です。
疲れたと感じたら——保護者の心のケアも大切
イヤイヤ期は、お子さんだけでなく保護者さんにとっても、心と体を消耗する時期です。「疲れた」と感じるのは、頑張っている証拠。けっして甘えではありません。 まずは、ご自身をねぎらってくださいね。
国立成育医療研究センターの研修教材は、「育てにくさを感じたときに対処できる親」を増やすことを大切な指標として位置づけ、保護者に寄り添う支援を進めています(育てにくさを感じる親に寄り添う支援/国立成育医療研究センター)。つまり、「育てにくい」と感じて相談することは、国の支援が想定している自然な行動なんです。ひとりで抱える必要はありません。
イライラが続くときは、お子さんから少し離れる時間も大切です。安全を確保したうえで、別の部屋でひと息ついたり、家族やサポートを頼ったり。関わり方は、保護者さんに余裕があってこそ続きます。睡眠が削られて余裕がなくなることも多い時期なので、子どもの昼寝はなぜ大切?年齢別の目安と寝かしつけのコツ もあわせて、家族みんなの休息を見直してみてください。
まとめ — イヤイヤは育ちのサイン、ひとりで抱えないで
「イヤ」ばかりの毎日に向き合う日々は、本当にくたびれますよね。でも、その「イヤ」は、お子さんの心が順調に育っている証。1歳半頃から始まり、2歳でピーク、3〜4歳で落ち着いていく、発達の自然な道のりです。
家庭でできることは3つ。①気持ちを言葉にして受け止める、②どちらもOKな2択を出す、③安全なら見守る。脅しや怒鳴りは避けたいけれど、できなかった日があっても大丈夫。立て直せることのほうが、ずっと大切です。そして何より、保護者さん自身の休息を後回しにしないでくださいね。
もし「ちょっと気になるな」というサインが続くときは、発達には大きな個人差があることを前提に、かかりつけ医や健診、地域の相談窓口に、遠慮なく相談してください。気になった時点で相談していいんです。イヤイヤ期は、いつか必ず通りすぎます。どうか、ひとりで抱え込まずに、一緒に乗り越えていきましょうね。
イヤイヤ期はいつから始まりますか?
一般的には1歳半頃から自己主張が強まり、2歳頃にピークを迎えるとされます。保育所保育指針でも「1歳3か月〜2歳未満」で自我の育ちの表れとして強い自己主張が見られると記載されています。ただし個人差が大きく、1歳前後から始まる子も、2歳を過ぎて本格化する子もいます。
イヤイヤ期はいつ終わりますか?
3歳頃から落ち着き始め、4歳頃には多くのお子さんで収まってくる傾向があります。感情をコントロールする脳の働きが少しずつ育ち、言葉でも気持ちを表せるようになるためです。これも個人差があり、3歳半や4歳頃まで続くこともあります。あせらず見守って大丈夫です。
イヤイヤ期の子どもへの効果的な関わり方を教えてください。
基本は3つです。①気持ちを言葉にして受け止める(「イヤだったね」)、②どちらも親がOKな選択肢を2つ示す(「赤と青どっち?」)、③安全が守れるならやりたい気持ちを見守る。保育所保育指針でも、自我の育ちを見守り「受容的に受け止める」ことが基本とされています。
やってはいけない対応はありますか?
「鬼が来るよ」「置いていくよ」などの脅しは、お子さんの不安を高め、安心の土台をゆらがせます。また大人も一緒に怒鳴ると、お子さんが気持ちのおさめ方を学ぶ機会を奪います。カッとしたら、ひと呼吸おいて「今は落ち着こう」と間を置くことが大切です。できなかった日は立て直せば大丈夫です。
イヤイヤがひどい場合、発達障害との違いはどう見分ければいいですか?
この記事で見分けや判断はできません。一般には、イヤイヤ期のかんしゃくは一過性で、抱っこや気分転換で落ち着くことが多いとされます。かんしゃくが頻繁で長く続く、言葉の遅れや目が合いにくいなど対人面の気になることが重なる場合は、1歳半・3歳健診や地域の発達相談窓口に相談してみましょう。
参考文献

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