母乳を増やす方法|小児科看護師が教える科学的に正しい7つの方法

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「母乳が足りない気がする…」その不安、とてもよくわかります

赤ちゃんが泣くたびに「母乳が足りていないのかな」「もっと出るようになりたい」と悩んでいませんか?授乳のたびに不安になったり、周りと比べて落ち込んだりする気持ち、とてもよくわかります。

実は、「母乳不足感」を感じるママはとても多いのですが、実際に母乳量が足りていないケースは思っているより少ないと言われています。

この記事では、小児科看護師として7年の経験と、2人の娘を母乳で育てた経験をもとに、科学的根拠に基づいた母乳量を増やす方法をお伝えします。

この記事でわかること:

  • 母乳が作られるしくみと「需要と供給」の原則
  • 科学的に効果が認められている母乳を増やす方法
  • 本当に母乳不足かどうかの見極め方
  • やってはいけないNG行動と根拠のない民間療法
  • 専門家に相談すべき具体的なサイン

母乳が作られるしくみ|2つのホルモンと「需要と供給」

プロラクチン:母乳を「作る」ホルモン

母乳分泌は主にプロラクチンオキシトシンという2つのホルモンによってコントロールされています。

プロラクチンは「母乳を作るホルモン」で、赤ちゃんがおっぱいを吸うたびに分泌が促されます。特に夜間はプロラクチンの分泌量が多くなるため、夜中の授乳は大変ですが、母乳量を増やすためには効果的と考えられています。

オキシトシン:母乳を「押し出す」ホルモン

オキシトシンは「母乳を押し出すホルモン」で、射乳反射(おっぱいがツーンとする感覚)を起こします。リラックスした状態で分泌が促進され、逆にストレスや緊張で抑制されることがあります。

興味深いことに、赤ちゃんのことを考えたり、泣き声を聞いたりするだけでも分泌されると言われています。

「飲まれた分だけ作られる」しくみ

母乳には「需要と供給」の原則があります。赤ちゃんがたくさん飲めば飲むほど、体は「もっと作らなきゃ」と判断して母乳を増やそうとします。

これは乳房内にある「FIL(乳汁分泌抑制因子)」というタンパク質の働きによるもので、乳房に母乳が溜まっていると分泌を抑え、空になると分泌を促します。つまり、こまめに授乳して乳房を空にすることが、母乳量を増やす基本なのです。

家庭でできる対処|科学的に効果のある7つの方法

1. 頻回授乳を心がける(1日8〜12回以上)

母乳量を増やすために最も効果的なのは頻回授乳です。WHO(世界保健機関)やUNICEFも「赤ちゃんが欲しがるときに欲しがるだけ授乳する(オンデマンド授乳)」を推奨しています。

新生児期は24時間に8〜12回の授乳が目安です。「3時間おき」と決めるより、赤ちゃんが欲しがるサインを見逃さずに授乳することが大切です。

2. 正しいラッチオン(吸着)を意識する

赤ちゃんが乳首だけでなく乳輪まで深くくわえることで、効率よく母乳を飲み取ることができます。浅い吸着は乳首の痛みや傷の原因にもなり、母乳量の増加を妨げることがあります。

正しいラッチオンのポイント:

  • 赤ちゃんの口が大きく開いてからくわえさせる
  • 下唇が外側にめくれている(アヒル口)
  • 乳輪の大部分が口に入っている
  • 授乳中に痛みがない

3. 両方のおっぱいをバランスよく

片方だけで授乳を終わらせず、両方のおっぱいを使うことで、両側の乳房に刺激を与えられます。「左5分→右5分→左5分→右5分」のように切り替えながら授乳する方法もあります。

4. 夜間授乳を続ける

夜中の授乳は大変ですが、夜間はプロラクチンの分泌が多くなるため、母乳量を増やすには効果的と考えられています。赤ちゃんが起きたら授乳を続けましょう。

5. 授乳後に搾乳を追加する

授乳後に搾乳機や手搾りで追加の刺激を与えることで、乳房を「もっと作って」という状態にできます。これを「パワーパンピング」と呼び、母乳量を増やしたいときに活用される方法です。

6. 十分な水分と栄養を摂る

授乳中は普段より水分を多めに摂りましょう。喉が渇く前にこまめに水分補給することを心がけてください。特定の食品で母乳が増えるという科学的根拠は乏しいですが、バランスの良い食事で体調を整えることは大切です。

7. 休息とリラックスを大切にする

疲労やストレスはオキシトシンの分泌を妨げることがあります。授乳中はスマホを置いて赤ちゃんを見つめたり、リラックスできる環境を整えましょう。「休めるときに休む」を意識してください。

やってはいけないこと・注意が必要なこと

  • 授乳間隔を空けすぎる:乳房に母乳が溜まると分泌が抑制されます
  • ミルクを足しすぎて授乳回数を減らす:母乳への刺激が減り、分泌量が落ちることがあります
  • 根拠のない民間療法に頼る:特定のお茶やサプリメントで母乳が増えるという科学的根拠は限定的です
  • 食事制限をする:「乳腺炎ケアガイドライン2020」では、食事制限による乳腺炎予防効果は否定されています

本当に母乳不足?見極めのポイント

母乳が足りているサイン

以下のサインがあれば、母乳は足りていると考えられます:

  • 体重が順調に増えている(生後3〜4ヶ月までは1日25〜30g程度の増加が目安)
  • おしっこが1日6回以上出ている(使い捨ておむつなら、しっかり濡れている)
  • うんちが定期的に出ている
  • 授乳後に落ち着いている時間がある
  • 肌のハリがあり、活気がある

「母乳不足感」の多くは誤解

こんな理由で「足りていない」と思い込んでいませんか?

  • 授乳後すぐにまた欲しがる → 赤ちゃんは頻繁に飲むのが普通です
  • おっぱいが張らなくなった → 需要と供給が安定した証拠です
  • 搾乳しても少ししか出ない → 赤ちゃんが吸う方が搾乳より上手です
  • よく泣く → 空腹以外の理由(眠い、暑い、抱っこしてほしい等)も多いです

こんなときは専門家に相談を

早めに受診・相談が必要なケース

  • 生後5日を過ぎても体重減少が続いている、または出生時から10%以上減少
  • 生後2週間を過ぎても出生体重に戻らない
  • おしっこが1日6回未満、または濃い色をしている
  • 赤ちゃんがぐったりしている、起きない、吸う力が弱い
  • 黄疸が強くなっている
  • 授乳のたびに乳首が痛い、傷ができている

母乳外来や助産師への相談がおすすめのケース

  • 体重の増え方がゆっくりで心配
  • ラッチオンがうまくいかない
  • 授乳姿勢に自信がない
  • 乳腺炎を繰り返している
  • 母乳育児を続けたいが、どうしたらいいかわからない

多くの産院や助産院で母乳外来を行っています。一人で悩まず、専門家に相談することで解決の糸口が見つかることが多いです。

ミルクを足すことは「失敗」ではありません

厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド」では、母乳育児を推進しつつも「母親が育児用ミルクを選択する場合は、その決定を尊重する」と明記されています。

日本では約半数のお母さんが混合栄養を選択しています。母乳とミルクを併用することは、けっして失敗ではありません。大切なのは、赤ちゃんが健康に育つこと、そしてママ自身が無理なく育児を続けられることです。

まとめ

  • 母乳量を増やす最も効果的な方法は頻回授乳(1日8〜12回)と正しいラッチオン
  • 夜間授乳はプロラクチン分泌が多い時間帯なので効果的
  • 体重増加とおしっこの回数が、母乳が足りているかの目安になる
  • 特定の食品やサプリメントで母乳が増えるという科学的根拠は限定的
  • 心配なときは一人で悩まず、母乳外来や助産師に相談

母乳育児がうまくいかないと、自分を責めてしまうこともあるかもしれません。でも、あなたは十分頑張っています。困ったときは遠慮なく専門家を頼ってくださいね。赤ちゃんと一緒に、自分たちに合ったペースを見つけていきましょう。

📚 参考文献・引用元

⚠️ ご注意(免責事項)

  • 本記事は情報提供を目的としており、医師の診断・治療の代替となるものではありません。
  • お子さまの症状や状態には個人差があります。気になる症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。
  • 母乳育児に困難を感じた場合は、産院の母乳外来や助産師に相談することをおすすめします。
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