毎晩の夜泣き、実は「光」が原因かもしれません
「また今夜も夜泣き…」「何時間も寝かしつけに時間がかかる…」そんな悩みを抱えていませんか?
実は、赤ちゃんの夜泣きや寝つきの悪さは、お部屋の「光環境」が大きく影響していることが研究で明らかになっています。難しいテクニックは必要ありません。朝と夜の光の使い方を少し変えるだけで、驚くほど睡眠が改善することがあるんです。
この記事でわかること
- 光が赤ちゃんの睡眠に与える科学的な影響
- 朝・昼・夜それぞれの適切な明るさ(具体的な数値)
- 家庭ですぐに実践できる光環境の整え方
- 月齢別の光環境づくりのポイント
- よくある失敗例と改善のコツ
なぜ「光」が夜泣きに関係するの?体内時計のしくみ
赤ちゃんの体内時計は未発達
生まれたばかりの赤ちゃんは、「朝になったら起きて、夜になったら眠る」という体内時計がまだできあがっていません。昼夜の区別なく、3〜4時間おきに寝たり起きたりを繰り返します。
でも安心してください。生後2〜3ヶ月頃から、赤ちゃんの体内時計は徐々に発達していきます。そのカギを握っているのが「光」なんです。
メラトニンという睡眠ホルモンの役割
赤ちゃんの体内では「メラトニン」という睡眠を促すホルモンが分泌されます。このメラトニンには興味深い特徴があります。
- 朝の明るい光を浴びると分泌が止まり、目が覚める
- 夜暗くなると分泌が増えて、自然な眠気が訪れる
- 1〜5歳の間は大人の約20倍も分泌される
- 強い光(特に青白い光)を浴びると分泌が抑えられてしまう
つまり、「朝は明るく、夜は暗く」という光環境を整えることで、赤ちゃんの体が自然に「今は昼だよ」「今は夜だよ」と理解できるようになるんです。
生活リズムの確立は生後2〜4ヶ月が勝負
赤ちゃんが昼夜の理解を身につけるのは、月齢2〜4ヶ月程度の期間と言われています。この時期にしっかりと光環境を整えてあげることで、その後の睡眠習慣の土台ができあがります。
「もう6ヶ月過ぎちゃった…」という方も大丈夫。何歳からでも光環境を整えることで改善は期待できますよ。
具体的にどれくらいの明るさがいいの?時間帯別の光環境
【朝】体内時計をリセットする明るさ:2500ルクス以上
朝の光で体内時計をリセットするには、2500ルクス以上の明るさが必要です。これは「晴れた日の窓際」くらいの明るさです。
具体的な実践方法
- 朝7時までには赤ちゃんを起こす
- 起きたらすぐにカーテンを開けて、窓際で過ごす
- 曇りの日でも、屋外なら1万ルクス程度あるので効果的
- 午前中に10〜15分程度、お散歩や外遊びをする
実は、室内の照明だけでは体内時計をリセットするには明るさが足りません。必ず自然光を取り入れることが大切です。
【昼間】お昼寝時の明るさ:木漏れ日程度
お昼寝の時は、真っ暗にする必要はありません。むしろ「晴れた日の木陰くらい」の明るさを保つことで、昼夜の区別がつきやすくなります。
お昼寝時のポイント
- レースカーテンだけにして、適度に明るさを確保
- 直射日光は避ける
- 照明は暗くしすぎない(調光できる場合は40〜50%程度)
【夕方〜就寝前】眠りの準備をする明るさ:500ルクス以下
メラトニンは500ルクス以上の明るさで分泌が抑制されてしまいます。18時以降は、徐々に部屋の明るさを落としていきましょう。
就寝前1〜2時間の過ごし方
- リビングの照明を通常の50〜70%程度に調光する
- 白い蛍光灯は避け、暖色系(オレンジ色)の電球色に切り替える
- 間接照明を活用して、目に直接光が入らないようにする
- テレビやスマートフォンの画面は控えめに(青い光が覚醒を促すため)
【夜間・睡眠中】深い眠りを守る明るさ:30ルクス以下
睡眠中は、できるだけ暗い環境が理想です。研究によると、30ルクスを超えると深い睡眠が減少し始めることがわかっています。
寝室の照明の工夫
- 基本は真っ暗(遮光カーテンを使用)
- 真っ暗が不安な場合は、月明かり程度の明るさに
- 常夜灯を使う場合は、赤ちゃんの視界に入らない足元側に設置
- 天井の照明は避ける(赤ちゃんは仰向けで寝るため、常に光が目に入る)
- 授乳やおむつ替えの時は、赤い光のライトがおすすめ(メラトニン分泌を妨げない)
家庭でできる!科学的睡眠環境の整え方【実践編】
ステップ1:朝の光環境づくり
起床後すぐに
- カーテンを全開にして、窓際で5〜10分過ごす
- できれば窓を開けて、外の空気も取り入れる
- 赤ちゃんを抱っこしながら、「おはよう、朝だよ」と声をかける
午前中の過ごし方
- 10時〜11時頃にお散歩タイム(10〜15分程度でOK)
- 公園の木陰やベランダで日光浴もおすすめ
- 雨の日でも、窓際で過ごす時間を意識的に作る
ステップ2:夕方からの段階的調光
18時以降
- リビングの照明を1段階暗くする(調光機能がない場合は、間接照明のみに)
- テレビの明るさ設定を「標準」以下に下げる
- 入浴は就寝の1〜2時間前に済ませる
就寝30分前
- 寝室に移動したら、照明を電球色の間接照明のみに
- 絵本の読み聞かせや子守唄など、静かな活動に
- 徐々に声のトーンも落として、「そろそろ寝る時間」の雰囲気を作る
ステップ3:睡眠中の光環境の徹底
就寝時
- 照明は完全に消す(真っ暗が基本)
- 真っ暗が不安な場合:足元側に赤いナイトライトを設置
- 遮光カーテンで外からの光を遮断
- カーテンの隙間から光が漏れる場合は、クリップやテープで塞ぐ
夜間のおむつ替え・授乳時
- 暖色系(できれば赤色)の小型ライトを使用
- 明るさは必要最小限に
- 赤ちゃんの顔に直接光が当たらないように注意
- 作業が終わったらすぐに消灯
ステップ4:早朝覚醒を防ぐ工夫
夏場など、朝4〜5時に明るくなって赤ちゃんが早く起きてしまう場合の対策です。
- 1級遮光カーテンを使用する(遮光率99.99%以上)
- カーテンレールの上部にも布やアルミホイルで光を遮断
- 窓枠の隙間から入る光も要注意
- 起床時刻(7時頃)まで暗い環境を保つ
月齢別・光環境づくりのポイント
生後0〜2ヶ月:昼夜の区別をつける準備期
この時期はまだ昼夜の区別がついていませんが、将来の睡眠習慣の土台作りとして光環境を意識しましょう。
- 朝は明るく、夜は暗くの基本を守る
- お昼寝は明るい場所でOK
- 夜間授乳が頻繁でも、照明は最小限に
生後3〜5ヶ月:体内時計が確立する重要期
この時期に光環境をしっかり整えることで、その後の睡眠が大きく変わります。
- 朝7時までに起こして、窓際で過ごす習慣をつける
- お昼寝の時間を一定にする
- 就寝時刻も毎日同じ時間に(20〜21時が目安)
- 夜は真っ暗にする練習を開始
生後6ヶ月〜1歳:習慣を定着させる時期
夜まとめて眠れるようになる子が増える時期です。光環境と合わせて、寝る前のルーティンも大切に。
- 生活リズムを崩さないよう、休日も同じスケジュールで
- 18時以降は徐々に照明を落とす習慣を徹底
- お風呂→着替え→絵本→消灯のルーティンを確立
1〜2歳:イヤイヤ期でも光環境は維持
この時期は「まだ寝たくない!」と抵抗することも。でも、光環境を整えることで自然な眠気を引き出せます。
- 照明を落とすボタンを子ども自身に押させる(楽しい習慣に)
- 暗くなってからできる遊び(絵本、静かな歌など)を用意
- 昼間の活動量を増やして、夜の眠気を促す
よくある失敗例と改善のコツ
失敗例1:夜も明るいリビングで過ごしている
「寝室に行く前にリビングで過ごす時間が長い」という家庭は要注意です。明るい照明の下で長時間過ごすと、メラトニンの分泌が遅れてしまいます。
改善のコツ
18時以降はリビングの照明も調光する。調光機能がない場合は、間接照明を活用するか、照明の一部を消すだけでも効果があります。
失敗例2:寝室の常夜灯が明るすぎる
天井についている豆電球タイプの常夜灯は、意外と明るく、赤ちゃんの視界に直接入ってしまいます。
改善のコツ
足元側に置くタイプの小型ライトに変更。赤い光(または暖色系)で、赤ちゃんの顔に光が当たらない位置に設置しましょう。
失敗例3:朝の光が足りていない
「カーテンは開けているけど、窓から離れた場所で過ごしている」という場合、光の量が不足している可能性があります。
改善のコツ
起床後10分間だけでも、窓際で過ごす時間を作りましょう。抱っこしながら窓の外を眺める、窓際で着替えをするなど、生活動線に組み込むと続けやすいですよ。
失敗例4:週末に生活リズムが崩れる
平日は早起きでも、週末に朝寝坊してしまうと体内時計がリセットされてしまいます。
改善のコツ
週末も起床時刻は変えずに、朝の光を浴びる習慣を維持しましょう。大人が疲れている場合は、赤ちゃんを起こしてカーテンを開けたら、また一緒にお昼寝するのもひとつの方法です。
今日からできる!最低限これだけは押さえたい3つのポイント
「いろいろあって難しそう…」と感じた方へ。まずはこの3つだけでも実践してみてください。
- 朝7時までに起こして、カーテンを全開にする
体内時計のリセットは朝の光から。これが一番重要です。 - 18時以降は照明を1段階暗くする
夕方から徐々に暗くすることで、自然な眠気が訪れます。 - 寝る時は真っ暗にする(または月明かり程度)
深い睡眠のためには、暗い環境が必須です。
この3つだけでも、1〜2週間続けることで変化を感じられることが多いですよ。
こんなときは受診を検討してください
光環境を整えても夜泣きが改善しない場合、他の原因が隠れている可能性があります。以下のような症状がある場合は、小児科を受診しましょう。
今すぐ受診が必要な症状
- 夜泣きの際に激しく泣き、顔色が悪い
- 嘔吐や下痢を伴う
- 発熱がある(38.5度以上)
- ぐったりして反応が鈍い
- 呼吸が苦しそう
数日以内に受診を検討すべき症状
- 光環境を整えて2〜3週間経っても全く改善がない
- 昼間も不機嫌で、全体的に睡眠が浅い
- いびきをかいている、呼吸が止まることがある
- 体重が増えていない、発達の遅れが気になる
- 生後2〜3ヶ月を過ぎても昼夜の区別が全くつかない
経過観察でよいケース
- 夜泣きはあるが、日中は機嫌がよい
- 光環境を整えてから少しずつ改善傾向がある
- 体重は順調に増えている
- 発達に問題はない
まとめ:光環境を整えて、家族みんなぐっすり眠ろう
夜泣きの改善に「光」が大きく関わっていることを、科学的根拠とともにお伝えしました。
この記事の重要ポイント
- 朝は2500ルクス以上の明るさで体内時計をリセット
- 夕方から徐々に照明を落とし、メラトニン分泌を促す
- 夜は30ルクス以下の暗い環境で深い睡眠を守る
- 生後2〜4ヶ月が昼夜の理解を促す重要な時期
- 光環境と合わせて、毎日同じ時間に起きる・寝る習慣も大切
すべてを完璧にやろうとしなくて大丈夫です。できることから、少しずつ始めてみてください。光環境を整えることは、赤ちゃんだけでなく、ママ・パパの睡眠の質も向上させます。
夜泣きは必ず終わりが来ます。それまでの間、科学的な方法でできるだけ快適に過ごせるよう、この記事が少しでもお役に立てれば嬉しいです。
心配なことがあれば、一人で抱え込まず、小児科や保健センターに相談してくださいね。みんなで一緒に乗り越えていきましょう。
📚 参考文献・引用元
- 1.厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」 [公式情報] エビデンス: 高(公的機関ガイドライン)
- 2.こども家庭庁「赤ちゃんが安全に眠れるように〜1歳未満の赤ちゃんを育てるみなさまへ〜」 [公式情報] エビデンス: 高(公的機関)
- 3.日本小児科学会「乳児の安全な睡眠環境の確保について」 [ガイドライン] エビデンス: 高(専門学会)
- 4.NPO法人赤ちゃんの眠り研究所「赤ちゃんの夜泣き〜睡眠の基礎知識・夜泣きの原因編」 [公式情報] エビデンス: 中(専門機関)
- 5.厚生労働省「こどもの睡眠」e-ヘルスネット [ガイドライン] エビデンス: 高(公的機関)
⚠️ ご注意(免責事項)
- 本記事は情報提供を目的としており、医師の診断・治療の代替となるものではありません。
- お子さまの症状や状態には個人差があります。光環境を整えても改善しない場合や、気になる症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。
- 夜泣きの原因は光環境だけではありません。体調不良、発達の問題、生活環境など、様々な要因が関係している可能性があります。

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