ジーナ式育児法の真実|科学的エビデンスとメリット・デメリット

The Truth About the Gina Method 科学的に正しい子育て

「ジーナ式って本当に効果があるの?」「赤ちゃんに悪影響はない?」——寝かしつけに悩むママ・パパなら、一度はジーナ式育児法について調べたことがあるのではないでしょうか。

ネット上には「生後2ヶ月で夜通し寝るようになった!」という成功談がある一方で、「赤ちゃんがかわいそう」「愛着形成に悪影響」という批判も目にしますよね。情報が錯綜していて、何を信じればいいのか迷ってしまう気持ち、よくわかります。

この記事では、小児科看護師として7年の経験を持つ私まろんが、科学的な研究結果をもとに、ジーナ式育児法の真実をお伝えします。メリット・デメリットを偏りなく解説しますので、ご家庭に合った選択をするための参考にしてくださいね。

この記事でわかること

  • ジーナ式育児法の基本的な内容と特徴
  • 睡眠トレーニングに関する科学的エビデンス(効果・安全性)
  • ジーナ式のメリットとデメリット
  • 日本で実践する際のポイントと注意点
  • 向いている家庭・向いていない家庭の特徴

ジーナ式育児法とは?基本知識を押さえよう

ジーナ式の概要

ジーナ式育児法は、イギリスのマタニティナース(乳母)ジーナ・フォードさんが1999年に出版した本で提唱した育児メソッドです。イギリス王室をはじめ上流階級の家庭で300人以上の赤ちゃんをケアした経験をもとに開発され、イギリスで75万部以上のベストセラーになりました。

日本では2007年に「カリスマ・ナニーが教える 赤ちゃんとおかあさんの快眠講座」として出版され、「ネントレ(ねんねトレーニング)」の代表的な方法として知られています。

ジーナ式の3つの柱

ジーナ式の核心は、赤ちゃんの1日のスケジュールをルーティン化することです。具体的には以下の3つがポイントになります。

①決まった時間の起床・就寝
基本は「7時起床・19時就寝」。毎日同じリズムで過ごすことで、赤ちゃんの体内時計を整えます。

②授乳と睡眠の分離
おっぱいやミルクを飲みながら寝落ちする習慣をつけず、「授乳」と「睡眠」を別々の行為として分けます。これにより、赤ちゃんが自力で入眠できる力を育てることを目指します。

③昼寝時間の管理
月齢に応じた昼寝の上限時間が設定されています。例えば、0〜1ヶ月では5時間程度、3〜6ヶ月では3時間程度、6〜12ヶ月では2.5〜3時間程度とされています。昼間に寝すぎないことで、夜にしっかり眠れるようにするという考え方です。

日本の公的機関の見解は?

ここで大切なことをお伝えしておきますね。日本小児科学会、厚生労働省、日本助産師会のいずれも、ジーナ式や睡眠トレーニングについて直接的な公式見解を発表していません

つまり、「日本の医学会が推奨している」とも「公的に禁止されている」とも言えないのが現状です。ただし、厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド」では、赤ちゃんが欲しがるときに授乳する「自律授乳」を基本方針としており、これはジーナ式のスケジュール授乳とは異なるアプローチであることは知っておいてくださいね。

睡眠トレーニングの科学的エビデンス

「ジーナ式は科学的に効果があるの?」「赤ちゃんの心に悪影響はない?」——これが一番気になるところですよね。ここでは、睡眠トレーニング全般に関する研究結果をご紹介します。

効果に関する研究

睡眠トレーニングの有効性については、複数の質の高い研究が行われています。

2016年に医学誌「Pediatrics」に掲載された研究では、生後6〜16ヶ月の乳児43名を対象に調査が行われました。その結果、段階的に泣いても様子を見る方法(段階的消去法)を行ったグループでは、入眠までの時間が13〜15分短縮し、夜間に目を覚ます回数も大幅に減ったと報告されています。

また、2006年のアメリカ睡眠医学会のレビューでは、52の研究のうち49研究(94%)が行動的睡眠介入の有効性を報告しました。つまり、適切に行えば睡眠トレーニングには一定の効果が期待できると考えられています。

安全性に関する研究(長期追跡調査)

「効果はあっても、赤ちゃんの心に傷が残るのでは?」という不安をお持ちの方も多いと思います。

この点について、最も重要な研究の一つが5年間の追跡調査です。2012年に「Pediatrics」誌に掲載されたこの研究では、326名の子どもを6歳まで追跡しました。その結果、睡眠トレーニングを受けた子どもと受けなかった子どもの間で、情緒・行動面の問題、親子関係、お母さんのメンタルヘルスなど20項目すべてにおいて有意な差は認められませんでした

また、別の研究では12ヶ月後のフォローアップでも愛着の形成に差はなく、むしろストレスホルモン(コルチゾール)の値は介入群で低下していたという報告もあります。

懸念を示す研究もある

一方で、懸念を示す研究もあることは正直にお伝えしますね。

2012年の研究では、泣かせっぱなしにされた赤ちゃんは泣き止んでもストレスホルモンが高いままだったという報告があります。ただし、この研究は対象者が25名と少なく、入院環境での実施であり、比較対照群がないという限界がありました。

また、母乳育児との関係では、Academy of Breastfeeding Medicine(2023年)が「特に生後12ヶ月までは睡眠トレーニングを推奨しない」との見解を示しています。スケジュール授乳では頻回授乳ができず、母乳の分泌量が減る可能性があるためです。

科学的エビデンスのまとめ

現時点でわかっていることを整理すると、以下のようになります。

一定のエビデンスがあること:

  • 6ヶ月以上の乳児において、短〜中期的な睡眠改善効果がある
  • 5〜6年の追跡調査では、発達への明確な悪影響は検出されていない
  • 標準化された評価では、愛着形成への悪影響は認められていない

まだわかっていないこと:

  • 成人期までの超長期的な影響(研究データがない)
  • 生後6ヶ月未満の乳児への効果・安全性(データ不足)

ジーナ式のメリットとデメリット

メリット

①赤ちゃんの睡眠リズムが整う
毎日決まった時間に就寝・起床することで体内時計が整い、早ければ生後2〜3ヶ月で夜通し眠るケースも報告されています。「ベッドに置くだけで自然に寝てくれるようになった」という体験談もあります。

②親の睡眠が確保できる
19時以降は自由時間となり、ご夫婦の時間や自分の時間を確保できます。睡眠不足によるイライラの軽減や、産後うつの予防にもつながる可能性があります。

③生活の予測が立てやすい
スケジュールが決まっているため、家事や外出の計画が立てやすくなります。また、赤ちゃんが泣いている理由をスケジュールから推測しやすいというメリットもあります。

④家族みんなで育児に参加しやすい
ルーティンが明確なので、パパや祖父母など他の家族も育児に参加しやすくなります。

デメリット

①母乳育児との両立が難しいことがある
WHO、厚生労働省、日本助産師会はいずれも「赤ちゃんが欲しがったら授乳」という需要主導型授乳を推奨しています。ジーナ式のスケジュール授乳では、母乳の分泌量が減ったり、赤ちゃんの体重増加が緩やかになるケースも報告されています。

②赤ちゃんによって合う・合わないがある
すべての赤ちゃんがスケジュールにぴったり合うわけではありません。生まれつき飲みムラがある子や、眠りが浅い子には合わないこともあります。「長男には全く合わず断念。次男は何もしなくても一人で寝るタイプだった」という体験談もあります。

③親へのストレスや罪悪感
スケジュール通りにいかないとストレスになることがあります。また、「赤ちゃんが泣いても様子を見る」ことへの罪悪感や、周囲からの「かわいそう」という声がストレスになることも。完璧主義的な方ほど追い込まれやすい傾向があります。

④日本の住宅事情との相性
ジーナ式は赤ちゃんとパパ・ママが別室で寝ることを推奨していますが、日本では赤ちゃん専用部屋の確保が難しい家庭も多いです。また、集合住宅では赤ちゃんの泣き声が近隣への騒音になる心配もありますよね。

家庭でできる実践のポイント

ジーナ式を試してみたいと思った方に、日本で実践する際のポイントをお伝えしますね。

厳格に守らなくてもOK!「ゆるジーナ式」という選択肢

厳格なジーナ式が続かなかったママたちの間で広がっているのが「ゆるジーナ式」です。以下の4点だけを守るという方法で、成功した体験談が多く報告されています。

  • 朝は7時台に起こす(夜泣きで眠れなかった日は多少長く寝かせてもOK)
  • 昼寝は極力、規定の時間内に収める
  • お風呂から出たら部屋を暗くする
  • おっぱいでの寝かしつけは極力避ける

この方法で「1ヶ月後に寝かしつけ時間が1時間から30分に短縮した」「夜泣きが3回から1回に減った」という報告もあります。

実践前に確認しておきたいこと

  • 赤ちゃんの体重:出生時の体重に戻っているか
  • 授乳間隔:3時間空いても大丈夫か
  • 月齢:多くの専門家は生後6ヶ月以降の開始を推奨
  • 家族の協力:特にパパの理解と協力が得られるか

やってはいけないこと

  • 低月齢での完全別室就寝:日本小児科学会およびアメリカ小児科学会は、SIDS(乳幼児突然死症候群)予防の観点から、生後6ヶ月(少なくとも1歳)までは同室での睡眠を推奨しています
  • 母乳の出が悪いのに無理にスケジュール授乳を続ける:赤ちゃんの体重増加が心配な場合は柔軟に対応しましょう
  • 赤ちゃんが明らかに体調不良のときにスケジュールを強行する:発熱や嘔吐があるときは、赤ちゃんの様子を優先してください

こんなときは専門家に相談を

ジーナ式を実践する中で、以下のような状況があれば、小児科医や助産師に相談することをおすすめします。

早めに相談した方がよいケース

  • 赤ちゃんの体重が思うように増えない
  • 母乳の分泌量が明らかに減っている
  • 赤ちゃんが長時間泣き続け、様子がいつもと違う
  • ママ自身が強い不安やストレスを感じている

すぐに受診が必要なケース

  • 赤ちゃんに発熱(38℃以上)、嘔吐、下痢などの症状がある
  • ぐったりしている、反応が鈍い
  • 顔色が悪い、唇が紫色になっている
  • 呼吸が苦しそう

これらの症状は睡眠トレーニングとは関係なく、すぐに医療機関を受診してください。

迷ったときは相談を

「うちの子に合っているのかわからない」「続けていいのか不安」——そんなときは、一人で抱え込まず、かかりつけの小児科医や、地域の保健師さん、助産師さんに相談してみてくださいね。心配なときに専門家の意見を聞くことは、決して恥ずかしいことではありません。

向いている家庭・向いていない家庭

ジーナ式が向いている家庭

  • 細かいスケジュール管理ができ、明確な指示を求めている
  • 起床時間と就寝時間を固定できる環境にある
  • 家族(特にパパ)の協力が得られる
  • 混合育児またはミルク育児をしている
  • 赤ちゃんが規則的なリズムを好む、比較的おとなしい気質

ジーナ式が向いていない家庭

  • 赤ちゃんを時間で縛ることに抵抗がある
  • スケジュール通りにいかないとストレスを感じやすい
  • 泣いている赤ちゃんを見守ることに強い罪悪感を持ちやすい
  • 完全母乳育児を希望している(特に最初の数ヶ月)
  • 敏感で泣きやすい気質の赤ちゃん

代替アプローチもあります

ジーナ式が合わないと感じた場合は、他の方法も検討してみてください。

ゆるネントレ:まず睡眠環境(音・光・室温)を整え、生活リズムを確立。泣いたらすぐ抱っこせず、まず声かけやトントンを試す方法です。

フェードアウト法:赤ちゃんを完全に一人にせず、親の存在を感じながら自分で眠る力を育てる方法。日本の住宅事情に適しています。

添い寝・添い乳:日本の伝統的な方法。ただし、窒息リスクへの注意や、卒乳時の対応は考えておく必要があります。

まとめ

  • ジーナ式育児法は、スケジュール管理で赤ちゃんの睡眠リズムを整える方法
  • 科学的研究では、6ヶ月以上の乳児で睡眠改善効果が示されており、5〜6年の追跡調査では発達への悪影響は検出されていない
  • ただし、すべての赤ちゃん・家庭に合うわけではなく、特に完全母乳育児との両立は難しいことがある
  • 日本で実践する場合は「ゆるジーナ式」など柔軟なアレンジがおすすめ
  • 大切なのは方法の選択そのものより、親子が無理なく続けられる方法を見つけること

最後に、睡眠コンサルタントの愛波あやさんの言葉をご紹介しますね。「子ども一人一人の気質や性格が違い、育児方針も各ご家庭で考え方が異なりますので、自分たちがハッピーであればどの方法を実践してもよい」——私もまさにその通りだと思います。

どんな方法を選んでも、赤ちゃんとご家族の笑顔が増えることが一番大切です。困ったときは一人で抱え込まず、専門家に相談してくださいね。

📚 参考文献・引用元

⚠️ ご注意(免責事項)

  • 本記事は情報提供を目的としており、医師の診断・治療の代替となるものではありません。
  • お子さまの状態には個人差があります。睡眠や発育について気になることがある場合は、必ずかかりつけの小児科医や助産師にご相談ください。
  • 本記事で紹介した研究結果は、すべての赤ちゃんに当てはまるものではありません。
いつもシェアして下さりありがとうございます!少しでも色んな人に知識が行き渡りますように...!

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