「さっきまで元気だったのに、夜中になると咳が止まらない…」「咳き込んで何度も起きてしまい、親子ともにぐったり」——こんな経験をされたママ・パパも多いのではないでしょうか。
子どもの咳は夜間に悪化しやすい特徴があり、眠れない夜が続くと本当につらいですよね。でも、咳の種類や様子をしっかり観察することで、家庭でできるケアや受診のタイミングが見えてきます。
この記事では、小児科看護師として7年間、夜間の救急対応も含めて多くのお子さんを見てきた経験から、咳のタイプ別の見極め方と家庭でできる緩和ケアをわかりやすくお伝えします。
この記事でわかること
- 子どもの咳が夜に悪化する理由
- 咳の音でわかる病気のサイン(コンコン・ケンケン・ゼーゼー)
- 今夜からできる家庭での緩和ケア5つ
- 今すぐ受診すべき危険な症状の見分け方
- 1歳以上のお子さんに使える「はちみつ」の活用法
なぜ子どもの咳は夜にひどくなるの?
「昼間は元気だったのに、なぜ夜になると急に咳がひどくなるの?」と不思議に思うママ・パパは多いですよね。実は、これにはいくつかの理由があります。
夜間に咳が悪化する主な原因
1. 自律神経の働きが変わる
夜になると体をリラックスさせる「副交感神経」が優位になります。すると気管支が狭くなりやすく、ちょっとした刺激でも咳が出やすくなるのです。
2. 体温と室温の差
布団に入って体が温まると、冷たい空気との温度差で気管支の粘膜が刺激されます。特に冬場や冷房が効いた部屋では、この刺激が強くなりやすいです。
3. 鼻水や痰がのどに流れ込む(後鼻漏)
横になると、鼻の奥にたまった鼻水がのどの方に流れ落ちやすくなります。この「後鼻漏(こうびろう)」が刺激となって咳が出ることがとても多いです。
4. 布団のホコリやダニ
寝返りを打つたびに、布団に含まれるホコリやダニの死骸が舞い上がり、気道を刺激して咳を誘発することがあります。
つまり、夜間に咳が悪化するのは病状が急に悪くなったわけではなく、体の仕組みや環境によるものであることが多いのです。適切な治療を受けているなら、過度に心配する必要はありません。
咳の音で見分ける!タイプ別チェックポイント
子どもの咳には様々な種類があり、咳の「音」は病気を見分ける大切な手がかりになります。夜間、普段と違う咳が出たときは、スマートフォンで動画を撮っておくと、受診時にとても役立ちます。
コンコン・ケンケン(乾いた咳)
考えられる原因:風邪の初期、アレルギー、乾燥など
痰がからまない軽い咳で、風邪のひき始めに多く見られます。咳き込んでも顔色がよく、その後ケロッとしているようなら、翌日の受診でも問題ないことが多いです。
ゴホゴホ・ゲホゲホ(湿った咳)
考えられる原因:風邪の回復期、気管支炎、副鼻腔炎など
痰がからんだ重たい音の咳です。風邪の治りかけに分泌された痰を出そうとして起こることが多く、体の防御反応として必要な咳でもあります。
ケンケン・バウバウ(犬が吠えるような咳)
考えられる原因:クループ症候群(急性喉頭炎)
犬の遠吠えやオットセイの鳴き声のような、独特の高い乾いた咳が特徴です。のどの奥(喉頭)が腫れて気道が狭くなることで起こります。夜間に突然悪化することが多いため、この咳が出たら要注意です。6か月〜3歳くらいのお子さんに多く見られます。
ヒューヒュー・ゼーゼー(喘鳴を伴う咳)
考えられる原因:気管支喘息、細気管支炎、RSウイルス感染症など
息を吐くときに「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という音が聞こえる場合は、気管支が狭くなっているサインです。肩やお腹を使って苦しそうに呼吸している場合は、早めの受診が必要です。
コンコンコン…ヒューッ(連続した咳+息を吸う音)
考えられる原因:百日咳
コンコンと連続した咳が続いた後、息を吸うときに「ヒューッ」という笛のような音がする場合は百日咳が疑われます。夜間に咳がひどくなり、咳き込んで吐いてしまうこともあります。
今夜からできる!家庭での緩和ケア5つ
お子さんの咳がつらそうなとき、少しでも楽にしてあげたいですよね。病院に行く前に試せる、家庭でできるケアをご紹介します。
1. 部屋を加湿する(湿度50〜60%が目安)
空気が乾燥するとのどや気管支の粘膜が刺激され、咳が出やすくなります。加湿器を使ったり、濡れタオルを部屋に干したりして、湿度を保ちましょう。ただし、加湿しすぎるとカビの原因になるので注意が必要です。
2. こまめな水分補給
のどを潤すことで咳の刺激が和らぎ、痰も出しやすくなります。冷たい飲み物はのどを刺激することがあるので、白湯や常温のお茶、ぬるめの飲み物を少量ずつこまめに飲ませてあげましょう。
3. 上体を少し起こして寝かせる
完全に横になると、鼻水や痰がのどに流れ込みやすくなります。背中や腰の下にクッションやタオルを敷いて、上体を少し高くしてあげると呼吸が楽になることがあります。抱っこで縦抱きにするのも効果的です。
4. 鼻水をこまめに吸い取る
小さなお子さんは自分で鼻をかめないため、鼻水がのどに流れて咳の原因になりがちです。電動鼻吸い器などでこまめに吸引してあげると、咳が和らぐことが多いです。お風呂上がりなど鼻水が柔らかくなったタイミングが効果的です。
5. はちみつを活用する(1歳以上限定)
1歳以上のお子さんには、寝る前に小さじ1杯程度のはちみつを舐めさせると咳が和らぐことがあります。世界保健機関(WHO)やアメリカ小児科学会でも、小児の咳の家庭ケアとしてはちみつが推奨されています。
はちみつには抗菌作用や保湿効果があり、のどの粘膜をコーティングして刺激を和らげてくれます。そのまま舐めさせるか、40℃程度のぬるま湯や温かいミルクに溶かして飲ませるとよいでしょう。
【重要】1歳未満の赤ちゃんには絶対にはちみつを与えないでください。乳児ボツリヌス症という命に関わる病気を起こす危険があります。加熱しても安全にはなりません。
やってはいけないこと
- 市販の咳止め薬を自己判断で使う:咳は体の防御反応なので、むやみに止めると痰が出せなくなり悪化することがあります。特に6歳未満への使用は慎重に。
- 柑橘類のジュースを与える:酸味がのどを刺激して咳を悪化させることがあります。
- 室温を上げすぎる:暖房を強くしすぎると乾燥が進み、逆効果になることも。
こんなときは受診を!症状別の判断目安
夜中に咳がひどくなると「今すぐ病院に行くべき?」「朝まで様子を見ていい?」と迷いますよね。以下の目安を参考にしてください。
🚨 今すぐ救急受診が必要な症状
- 呼吸困難:息を吸うときに胸やのどが大きくへこむ、肩で息をしている、小鼻がヒクヒク動く
- 顔色が悪い:唇や爪が青紫色になっている(チアノーゼ)
- 意識がおかしい:呼びかけに反応しない、ぐったりしている、目の焦点が合わない
- 呼吸の音が異常:息を吸うときにヒューヒューと苦しそうな音がする
- よだれを流して前かがみ:あごを突き出して呼吸している(急性喉頭蓋炎の可能性)
これらの症状がある場合は、迷わず救急車(119番)を呼んでください。
⚠️ 夜間でも早めに受診したい症状
- 「ケンケン」と犬が吠えるような咳が続く(クループ症候群の疑い)
- 咳き込んで何度も吐いてしまう
- 水分がまったく摂れない
- 苦しくて横になれない、眠れない
- 顔が真っ赤になるほど激しく咳き込む
- 生後3か月未満の赤ちゃんの咳
判断に迷ったら、小児救急電話相談(#8000)に電話して相談しましょう。看護師や医師がアドバイスしてくれます。
📅 翌日〜数日以内に受診をおすすめする症状
- 咳以外は元気で、水分も摂れている
- 咳き込んでも、その後はケロッとしている
- 咳が2週間以上続いている
- 熱はないが、咳がなかなか治らない
これらの場合は、翌日以降に小児科を受診すれば大丈夫なことが多いです。ただし、咳が2週間以上続く場合は、喘息や副鼻腔炎などが隠れている可能性があるので、必ず受診してください。
まとめ
- 夜間に咳が悪化するのは体の仕組みによるもので、必ずしも病状が悪化したわけではない
- 咳の「音」を観察することで、病気の種類を見分ける手がかりになる
- 加湿・水分補給・上体を起こす・鼻吸引・はちみつ(1歳以上)が家庭でできる主なケア
- 呼吸困難・チアノーゼ・意識障害がある場合は迷わず救急受診を
- 迷ったら#8000に電話して相談しよう
夜中の咳は、お子さん本人もつらいですし、看病するママ・パパも本当に大変ですよね。でも、多くの場合は適切なケアで乗り越えられます。心配なときは遠慮なく医療機関に相談してくださいね。一人で抱え込まず、頼れるものは頼りながら、この時期を乗り越えていきましょう。


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