RSウイルス感染症の症状と受診目安|小児科看護師が解説

子育て

「保育園でRSウイルスが流行っているらしい」「赤ちゃんがゼーゼーして苦しそう…」そんな不安を抱えていませんか?

RSウイルス感染症は、冬を中心に流行する感染症で、2歳までにほぼすべてのお子さんがかかると言われています。多くは軽い風邪で済みますが、とくに1歳未満の赤ちゃんでは重症化することもあるため、正しい知識を持っておくことが大切です。

この記事では、7年間の小児科看護師経験と2人の娘の子育て経験をもとに、RSウイルス感染症について「知っておきたいこと」をわかりやすくお伝えします。

この記事でわかること

  • RSウイルス感染症とはどんな病気か
  • どんな症状が出るのか、重症化のサイン
  • 家庭でできる具体的なケア方法
  • 「今すぐ受診」「当日中に受診」など受診の目安
  • 家庭内感染を防ぐための予防法

RSウイルス感染症ってどんな病気?

RSウイルス感染症の基本

RSウイルス感染症は、「RSウイルス(Respiratory Syncytial Virus)」というウイルスが原因で起こる呼吸器の感染症です。

厚生労働省によると、生後1歳までに半数以上、2歳までにほぼ100%のお子さんが少なくとも1度は感染するとされています。つまり、ほとんどのお子さんが経験する「よくある感染症」なんですね。

ただし、何度も感染を繰り返す特徴があり、一度かかったからといって免疫がつくわけではありません。2回目以降の感染では症状が軽くなることが多いですが、初めての感染時は重症化しやすい傾向があります。

主な感染経路

RSウイルスは主に2つの経路で感染します。

飛沫感染(ひまつかんせん)
感染している人の咳やくしゃみ、会話などで飛び散ったウイルスを吸い込むことで感染します。

接触感染
ウイルスがついたドアノブ、おもちゃ、手すりなどを触った手で、自分の目・鼻・口を触ることで感染します。RSウイルスは環境表面で数時間~6時間程度は感染力を保つと言われています。

とくに保育園や家庭内など、密接な接触が多い環境では感染が広がりやすいので注意が必要です。

どんな症状が出るの?

RSウイルスに感染すると、2〜8日(多くは4〜6日)の潜伏期間を経て症状が現れます。

軽症の場合(約7割のお子さん)

  • 発熱
  • 鼻水・鼻づまり
  • のどの痛み

これらの症状が数日続いた後、1週間〜10日程度で自然に良くなることが多いです。

重症化した場合(約3割のお子さん)

  • 咳がひどくなる
  • ゼーゼー、ヒューヒューという呼吸音(喘鳴:ぜんめい)
  • 呼吸が苦しそう
  • ミルクや食事がとれない

重症化すると「細気管支炎(さいきかんしえん)」や「肺炎」に進展することがあります。細気管支炎とは、肺につながる一番細い気管支に炎症が起きて腫れ、空気の通り道が狭くなってしまう状態です。

重症化しやすいお子さん

以下に当てはまるお子さんは、RSウイルス感染症が重症化しやすいと言われています。

  • 生後6か月未満の赤ちゃん(とくに生後3か月未満は要注意)
  • 早産で生まれたお子さん
  • 低出生体重児(小さく生まれたお子さん)
  • 心臓や肺に持病があるお子さん
  • 免疫機能が低下しているお子さん

2歳以上のお子さんでは「鼻風邪」程度で終わることが多いですが、1歳未満、とくに6か月未満の赤ちゃんでは重症化のリスクが高くなります。

家庭でできるケア方法

RSウイルス感染症には特効薬がなく、治療は症状を和らげる「対症療法」が基本です。つまり、家庭でのケアがとても大切になります。

水分補給をこまめに

発熱や咳で体力を消耗し、脱水になりやすい状態です。母乳やミルク、湯冷まし、麦茶、幼児用イオン飲料など、お子さんが飲めるものを少量ずつ、こまめに与えましょう。

一度にたくさん飲ませると吐いてしまうこともあるので、スプーン1杯ずつなど少量から始めるのがコツです。

鼻水をこまめに吸引する

鼻が詰まると呼吸がしづらくなり、ミルクや食事もうまく摂れなくなります。市販の鼻吸い器を使って、こまめに鼻水を吸ってあげましょう。

入浴後や蒸しタオルで鼻を温めた後は、鼻水が出やすくなるのでおすすめです。

部屋の湿度を保つ

空気が乾燥すると、のどや気管支が刺激されて咳が出やすくなります。加湿器を使ったり、濡れタオルを室内に干したりして、湿度を50〜60%程度に保つと呼吸が楽になります。

楽な姿勢で休ませる

咳がひどいときは、上体を少し起こした姿勢のほうが呼吸が楽になることがあります。クッションや丸めたタオルを背中に当てて、少し傾斜をつけてあげましょう。

咳は無理に止めない

咳き込んで吐いてしまうこともありますが、咳は痰を出すための大切な反応です。背中をやさしくさすったり、トントンと軽く叩いたりして、痰を出しやすくしてあげてください。

やってはいけないこと

  • 市販の咳止め薬を自己判断で使う:とくに乳児への使用は危険な場合があります。必ず医師に相談を。
  • 無理に食べさせる:食欲がないときは水分補給を優先しましょう。
  • 熱いお風呂に長く入れる:体力を消耗します。汗を流す程度の短時間にしましょう。

こんなときは受診を!見逃せない危険サイン

RSウイルス感染症は多くの場合、家庭でのケアで良くなりますが、以下のような症状があるときは医療機関を受診してください。

🚨 今すぐ救急受診が必要な症状

  • 呼吸をしていない時間がある(無呼吸):とくに生後3か月未満の赤ちゃんで起こりやすく、突然死につながることもあります
  • 唇や顔色が青紫色になっている(チアノーゼ):酸素が足りていない危険なサインです
  • ぐったりして意識がもうろうとしている
  • 肩で息をしている、あばらの間がへこむ呼吸(陥没呼吸):呼吸にいつも以上の力を使っている状態です
  • 呼吸が極端に速い

これらの症状がある場合は、夜間・休日でも迷わず救急を受診してください。

⚠️ 当日中に受診が必要な症状

  • ゼーゼー、ヒューヒューという呼吸音が強い
  • 咳き込んで何度も吐いてしまう
  • 水分がほとんど摂れない(母乳・ミルクを飲まない)
  • おしっこの量が明らかに減っている(半日以上出ていない)
  • 生後6か月未満の赤ちゃんで38度以上の発熱がある
  • 機嫌が悪く、あやしても泣き止まない

📋 翌日までに受診を検討する症状

  • 発熱が3日以上続いている
  • 咳や鼻水が1週間以上続いて良くならない
  • 夜、咳で何度も目が覚める
  • 食欲がなく、元気がない状態が続く

判断に迷うときは、お住まいの地域の「小児救急電話相談(#8000)」に電話すると、看護師や医師からアドバイスを受けられます。「受診したほうがいいかな?」と少しでも不安に感じたら、遠慮なく相談してくださいね。

家庭内感染を防ぐために

RSウイルスは感染力が強く、家庭内でも広がりやすいです。とくに赤ちゃんがいるご家庭では、以下の予防策を心がけましょう。

手洗いの徹底

外出から帰ったとき、食事の前、鼻をかんだ後などは、石けんでしっかり手を洗いましょう。アルコール消毒剤も有効です。

おもちゃや手が触れる場所の消毒

赤ちゃんが触るおもちゃ、ドアノブ、手すり、テーブルなどは、アルコールや塩素系消毒剤でこまめに拭き取りましょう。

風邪症状がある人はマスクを

上のお子さんや大人が風邪気味のときは、できるだけマスクを着用し、赤ちゃんとの接触を控えましょう。大人では「ただの風邪」だと思っていても、実はRSウイルスだったというケースはよくあります。

流行期は人混みを避ける

とくに生後6か月未満の赤ちゃんは、流行期に人混みに連れて行くのはできるだけ避けましょう。

予防薬・ワクチンについて

2024年から、RSウイルス感染症を予防する新しい選択肢が増えました。妊婦さんが接種するワクチン(アブリスボ)や、赤ちゃんに投与するモノクローナル抗体(ベイフォータス、シナジス)などがあります。とくに早産児や基礎疾患のある赤ちゃんには保険適用となる場合もありますので、詳しくはかかりつけ医にご相談ください。

まとめ

  • RSウイルス感染症は2歳までにほぼ全員がかかる感染症。多くは軽症で済みます
  • 1歳未満、とくに6か月未満の赤ちゃんは重症化に注意が必要です
  • 特効薬はなく、水分補給・鼻吸引・加湿など家庭でのケアが大切
  • 「呼吸が苦しそう」「顔色が悪い」「水分が摂れない」ときはすぐに受診を
  • 手洗い・消毒・マスクで家庭内感染を防ぎましょう

お子さんの様子をよく観察して、「いつもと違う」「何かおかしい」と感じたときは、迷わず医療機関を受診してください。ママ・パパの「何か変」という直感は、とても大切なサインです。一人で抱え込まず、困ったときは専門家を頼ってくださいね。

📚 参考文献・引用元

⚠️ ご注意(免責事項)

  • 本記事は情報提供を目的としており、医師の診断・治療の代替となるものではありません。
  • お子さまの症状や状態には個人差があります。気になる症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。
  • 記事の内容は執筆時点の情報に基づいています。最新の情報は厚生労働省や医療機関にご確認ください。

いつもシェアして下さりありがとうございます!少しでも色んな人に知識が行き渡りますように...!

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