「何を着せたらいいの?」は多くのママ・パパの悩みです
「うちの子、暑がり?寒がり?」「この季節、何枚着せればいいの?」子どもの服装選びで迷うこと、ありますよね。特に初めての育児では、厚着させすぎて汗びっしょりになったり、逆に薄着で風邪をひかせないか心配になったり……。実は子どもの体温調節機能は年齢とともに発達するため、月齢や年齢に応じた服選びが大切なんです。
この記事でわかること
- 年齢別の体温調節の特徴と「大人より1枚少なく」の本当の意味
- 季節ごとの具体的な着せ方と調整のコツ
- 睡眠時の安全な服装とSIDS予防のポイント
- フードやひもなど、避けるべき危険なデザイン
- 体温チェックの正しい方法と着せすぎ・薄着のサイン
子どもの体温調節機能は3歳頃まで発達途中です
新生児〜生後6ヶ月:「大人+1枚」から「大人と同じ」へ
新生児は体重あたりの体表面積が成人の約3倍あり、熱が逃げやすい構造になっています。また自律神経も未熟で汗を十分にかけないため、環境温度の影響を受けやすいのが特徴です。
新生児期(生後28日まで)は体温調節が最も未熟な時期。短肌着+コンビ肌着を基本層として、その上に2WAYオールを着せ、布団やおくるみも1枚と数えて調整します。「大人+1枚」が目安ですが、赤ちゃんの平熱は成人より0.5〜0.6℃高く、36.5〜37.5℃が正常範囲です。
生後1〜6ヶ月になると徐々に活動量が増え、生後4ヶ月頃からは「大人と同じか1枚少なく」へ移行していきます。背中を触って汗ばんでいないか、こまめにチェックする習慣をつけましょう。
生後6ヶ月〜3歳:「大人より1枚少なめ」が基本に
生後6〜12ヶ月では、8ヶ月頃から体温調節機能が少しずつ働き始めます。ハイハイやつかまり立ちで活動量が増えるため、「大人より1枚少なめ」を意識しましょう。この時期からセパレートタイプへの移行も始まります。
1〜3歳は運動量が急増する時期。走ったり跳んだりする活動で体温が上がりやすくなります。厚着は動きを妨げるだけでなく、汗による体の冷えを招くため、引き続き「大人より1枚少なめ」を維持します。体温調節機能は3歳頃にようやくある程度完成すると考えられています。
3〜6歳:自己調整能力を育てる時期
体温調節機能がほぼ完成し、「暑かったら脱ぐ・寒くなったら着る」という自己調整ができるようになってきます。「暑い?」「寒くない?」と声をかけながら、子ども自身の感覚を育てることも大切です。
季節ごとの着せ方には科学的な根拠があります
春・秋:朝晩の寒暖差に対応する重ね着を
朝晩の寒暖差が10度以上になることも多い季節。脱ぎ着しやすい薄手の羽織ものを携帯することが重要です。室温20〜25℃では「肌着+ズボン+長袖シャツ」、屋外10〜16℃では「肌着+ズボン+長袖シャツ+トレーナー+コート」が目安とされています。
夏:通気性と熱中症予防を最優先に
子どもは汗をかく機能が未発達で、体の表面から熱を逃がすことで体温調節を行います。そのため以下のポイントを意識しましょう。
- 通気性の良い涼しい素材(綿、麻など)を選ぶ
- 薄い色の衣服で熱を吸収しにくくする
- 室内では肌着+半袖で十分なことが多い
- 外出時は帽子で直射日光を防ぐ
「肌着を着せると暑いのでは?」と思うかもしれませんが、肌着は汗を吸着して肌を清潔に保ち、洋服の刺激から肌を守る役割があります。夏でも基本的に着せた方がベターです。
冬:「厚手1枚」より「薄手の重ね着」が効果的
服と服の間にできる静止空気の層が保温に重要です。適度なゆとりのある服を重ねると効果的で、「3つの首(首・手首・足首)を温める」ことで効率的に保温できます。
- 室内:肌着+長袖ウェアで十分
- 外出時:アウターを1枚追加
- ベストやカーディガンで微調整
室内が暖かい場合、厚着したままだと汗をかいて逆に体を冷やしてしまいます。こまめな調整を心がけましょう。
家庭でできる適切な衣服選びのポイント
体温チェックの正しい方法
適切な服装かどうかは、以下の方法で確認できます。
- 首の後ろや背中に手を入れて確認
汗ばんでいたら着せすぎ、お腹や背中が冷たければ着せ足しが必要です - 手足の冷たさは気にしなくてOK
赤ちゃんは手足で体温調節するため、手足が冷たいのは正常です。背中が温かく、爪の色がピンクであれば問題ありません - 機嫌や顔色もチェック
暑がっている時は顔が赤く、寒い時は唇が紫がかることがあります
睡眠時は掛け布団よりスリーパーが安全
こども家庭庁と日本小児科学会の最新ガイドライン(2024〜2025年)では、画期的な推奨が示されています。「1歳になるまでは掛け布団は使わず、スリーパーなどの着るもので寒さを調整すると安心」とされています。掛け布団は赤ちゃんの顔にかかると窒息リスクがあるためです。
季節別の睡眠時衣服の目安
- 室温25〜28℃(夏):薄手の半袖パジャマか肌着1枚のみ
- 室温22〜25℃(春・秋):肌着+長袖パジャマ
- 室温18〜22℃(秋冬):肌着+長袖パジャマ+スリーパー
敷布団は硬めで平坦なもの、枕は窒息リスクがあるため1歳未満では使用しない方が安全とされています。
安全な服選び:避けるべきデザイン
消費者庁の調査によると、子どもの服が関係する事故やヒヤリハット経験がある保護者は全体の77%に上ります。以下のデザインは避けましょう。
- フード付きの服:玄関ドアの取っ手や遊具に引っかかり、首が絞まる事故が報告されています
- 首回りや背中からのひも:JIS規格では7歳未満の子どもの頭・首回り、背中からの垂れ下がりひもを禁止しています
- スパンコール・ビーズ・小さなボタン:誤飲のリスクがあります
- 大きすぎるサイズ:裾を踏んで転倒したり、袖が機械に巻き込まれる危険があります
保育園・幼稚園でこれらが禁止されているのは、安全上の理由があるからです。自宅でも同じ基準で選びましょう。
アトピー性皮膚炎がある子どもの服選び
「素材」より「肌触り」を重視することが推奨されています。
- 適した素材:綿100%(特に超長綿)、オーガニックコットン、シルク
- 避けるべき素材:通常のウール、化学繊維、硬い生地のデニム
- 縫い目が外側の製品や、洗濯タグがプリントタイプの製品を選ぶ
- 洗濯方法:すすぎは必ず2回、柔軟剤は基本的に使用しない
やってはいけないこと
- 「汗をかけば治る」と厚着させる:発熱時に厚着で発汗させると脱水リスクが上昇します
- 発熱素材(ヒートテックなど)を常用:汗で冷えやすいため、子どもには綿100%が推奨されます
- 寝るときに厚い掛け布団:1歳未満ではSIDSリスクが上がります
こんなときは受診を
衣服選びに関連して、以下のような症状が見られた場合は受診が必要です。
今すぐ救急受診が必要
- 熱中症の疑い:意識がもうろうとしている、けいれんを起こした、呼びかけに反応しない
- 低体温症の疑い:体温が35℃以下で、ぐったりしている、顔色が悪く唇が紫色
- フードやひもが首に巻きついて呼吸困難
- 服の装飾品(ボタン・ビーズなど)を誤飲し、呼吸が苦しそう
当日中に受診すべき症状
- 熱中症の初期症状:大量の汗、めまい、吐き気、頭痛、体温が38℃以上
- 広範囲のあせもで膿んでいる、ひどく痒がって引っかき傷がある
- 衣服による摩擦で皮膚に赤み・ただれが広がっている
- アトピー性皮膚炎が急激に悪化し、かゆみで眠れない
翌日まで様子を見てよいが注意が必要
- 軽度のあせもがある(数カ所程度で、かゆみが強くない)
- 衣服の縫い目やタグで軽い赤みが出ている(範囲が狭く、本人が気にしていない)
- 暑さで機嫌が悪いが、水分は摂れている
判断に迷うときは、小児救急電話相談(#8000)に相談することもできます。
まとめ:個々の子どもをよく観察することが一番大切
この記事の要点
- 「大人より1枚少なく」は目安。年齢や活動量で調整が必要
- 体温チェックは背中や首の後ろで。手足の冷たさは心配不要
- 1歳未満の睡眠時は掛け布団よりスリーパーが安全
- フード・ひも付きの服は避け、安全を最優先に
- 「着せすぎ」はSIDSリスク要因。部屋全体を温める方が安全
エビデンスに基づく原則は大切ですが、最終的に重要なのは目の前のお子さんをよく観察することです。活動量が多い子、汗っかきの子、体温が高めの子では、さらに調整が必要かもしれません。
「どう着せたらいいかわからない」という不安は、多くのママ・パパが感じるもの。この記事が、安全で快適な服選びの出発点になれば嬉しいです。迷ったときは、遠慮なく小児科医や保健師さんに相談してくださいね。一人で抱え込まなくて大丈夫ですよ。
📚 参考文献・引用元
- 1.こども家庭庁「赤ちゃんが安全に眠れるように〜1歳未満の赤ちゃんを育てるみなさまへ〜」(2024年改訂) [公式情報] エビデンス: 高
- 2.日本小児科学会「乳児の安全な睡眠環境の確保について 2024年改訂に関する見解」 [ガイドライン] エビデンス: 高(ガイドライン)
- 3.消費者庁「子ども服のサイズ、ひもやフードに注意!安全性を第一に選びましょう」 [公式情報] エビデンス: 高
- 4.国立成育医療研究センター「熱中症(熱射病)」 [公式情報] エビデンス: 高
- 5.日本工業規格 JIS L4129(子ども用衣料の安全性) [ガイドライン] エビデンス: 高(規格)
⚠️ ご注意(免責事項)
- 本記事は情報提供を目的としており、医師の診断・治療の代替となるものではありません。
- お子さまの症状や状態には個人差があります。気になる症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。

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