「授乳中、ついスマホを見てしまう…」「夜中の授乳は暗い中でスマホだけが頼り…」
こんな経験、ありませんか?実は東京大学の調査によると、0歳児のママの約70%が授乳中にスマホを使っているという結果が出ています。1日に何度もある授乳タイム、つい手持ち無沙汰でスマホに手が伸びてしまいますよね。
でも、日本小児科医会は「授乳中のメディア視聴は止めましょう」と提言しています。これって本当に守らないといけないの?赤ちゃんにどんな影響があるの?
この記事では、小児科看護師の視点から、授乳中のスマホ使用が赤ちゃんに与える影響と、忙しいママでも実践できる現実的な対処法をお伝えします。
この記事でわかること
- なぜ「授乳中のスマホはダメ」と言われるのか、その科学的根拠
- 赤ちゃんの目の発達と授乳中のアイコンタクトの関係
- 「ながら授乳」が言語発達や愛着形成に与える影響
- 完璧を目指さなくてOK!現実的な授乳中の過ごし方
- こんなときは専門家に相談を、というサイン
なぜ「授乳中のスマホ」が問題視されているの?
まず、日本小児科医会が2004年に発表した「子どもとメディアの問題に対する提言」では、5つの具体的な提言の2番目に「授乳中、食事中のテレビ・ビデオの視聴は止めましょう」と明記されています。
これはもともとテレビやビデオについての提言でしたが、現在ではスマートフォンやタブレットにも同様のことが言えると考えられています。
では、なぜ授乳中のメディア視聴が問題なのでしょうか?大きく3つの理由があります。
理由1:親子のコミュニケーションが減る
2024年に発表されたテキサス大学の研究では、親がスマホを使っているときは、赤ちゃんへの語りかけが16%減少することがわかりました。特に1〜2分程度の短時間のスマホ使用でも、語りかけの減少が見られたそうです。
「たった16%?」と思うかもしれませんが、1日に何度もある授乳のたびに積み重なると、かなりの差になります。赤ちゃんは言葉を話せなくても、ママ・パパの声を聞いて言葉を学んでいる最中。この時期の語りかけの量は、後の言語発達に影響すると考えられています。
理由2:アイコンタクトの機会を逃してしまう
ここがとても大切なポイントです。生まれたばかりの赤ちゃんの目は、約30cmの距離にしか焦点が合いません。そして、この30cmという距離は、まさに授乳中のママと赤ちゃんの目の距離なんです。
赤ちゃんにいろいろな図形を見せる実験では、人間の目のように黒い点が2つある図形を一生懸命見ようとすることがわかっています。つまり、赤ちゃんは本能的に「授乳中にママの目を見たい」と思っているのです。
この時期にしっかりアイコンタクトを取ることで、赤ちゃんは安心感を得て、親子の愛着関係(アタッチメント)が形成されていきます。
理由3:愛着形成への影響
愛着形成とは、赤ちゃんが「この人は自分を守ってくれる、安心できる存在だ」と感じる関係性を築くことです。しっかりとした愛着が形成されると、赤ちゃんは「心の安全基地」を持つことができ、将来的にストレスに強く、情緒が安定した子どもに育つと言われています。
授乳は、単に栄養を与える時間ではありません。目を合わせ、声をかけ、肌と肌を触れ合わせる、赤ちゃんとの大切なコミュニケーションの時間でもあるのです。
実際の研究でわかっていること
「授乳中のスマホがダメ」と言われると、罪悪感を感じてしまうママも多いと思います。でも、実際の研究結果を見てみると、もう少しバランスの取れた見方ができます。
神戸大学の研究(2018年)
神戸大学と東邦大学の研究チームが、授乳中のスマホ操作が乳児のぐずりに影響するかを調べた研究があります。
生後4〜8ヶ月の赤ちゃんとママ5組を対象に、「授乳のみ」と「スマホ操作しながら授乳」を比較したところ、確かに赤ちゃんの手足の動きに変化は見られました。しかし、これはスマホ操作によってママの体勢が変わったことが原因である可能性が高く、スマホ操作そのものが直接ぐずりを引き起こしているとは言い切れないという結論でした。
東京大学・KDDI総合研究所の調査
0〜6歳の子どもを持つ母親を対象にした大規模調査では、授乳中のスマートフォン利用率は0歳児の母親で70.4%と、子どもと一緒に過ごす場面の中で最も高い結果でした。
特に夜間の授乳は、電気をつけずにある程度のまとまった時間を過ごす必要があり、手軽に使えるスマートフォンが活用されている実態が浮かび上がりました。
つまり、「授乳中にスマホを見てしまう」というのは、決して少数派の行動ではなく、多くのママが経験していることなのです。
家庭でできる!授乳中の過ごし方のヒント
「完全にスマホを断つのは無理…」という方も多いと思います。大切なのは、「全部ダメ」ではなく、メリハリをつけることです。
意識したい3つのポイント
1. 1日のうち何回かは「赤ちゃんだけを見る授乳タイム」を作る
1日8回以上ある授乳すべてで赤ちゃんだけを見つめているのは、正直難しいですよね。でも、例えば「朝一番の授乳」「お昼の授乳」など、1日に2〜3回は赤ちゃんの顔を見ながら、声をかけながら授乳する時間を意識的に作ってみてください。
2. スマホを使うなら「ながら見」ではなく「区切り」を意識
ダラダラとSNSをスクロールし続けるのではなく、「このニュース記事を読み終わったら赤ちゃんを見る」「LINEの返信だけしたら終わり」など、区切りを決めておくと良いでしょう。
3. 夜間授乳は仕方ない部分も
真っ暗な中での夜間授乳で、スマホの明かりを頼りにするのは仕方ない面もあります。ただし、画面の明るさを最低限に落とす、ブルーライトカットモードにするなどの工夫はしてみてください。また、赤ちゃんの目に直接光が入らないよう注意しましょう。
スマホを使うときの注意点
- 落下に注意:片手で操作していてスマホが赤ちゃんの顔や体に落下する事故が報告されています。スマホスタンドを使うか、しっかり両手で持てる体勢で
- 姿勢の崩れに注意:スマホに集中すると授乳姿勢が崩れ、乳首トラブルや赤ちゃんの飲みにくさにつながることがあります
- 赤ちゃんの様子を見る:息遣いや顔色の変化には常に気を配りましょう
- 光を近づけすぎない:スマホの光源を赤ちゃんの目に入れないように
スマホ以外の授乳中の過ごし方
- 赤ちゃんに話しかける:「おいしい?」「いっぱい飲んでね」など、短い言葉でOK
- 歌を歌う:子守唄や好きな歌を小声で
- 赤ちゃんの顔を観察:目の形、まつげの長さ、ほっぺの柔らかさ…じっくり見る機会は意外と少ないもの
- 軽食をとる:おにぎりやサンドイッチなど片手で食べられるものを
- 上の子の相手:第2子以降の場合、絵本を読んであげるなど上の子との時間に
こんなときは専門家に相談を
授乳中のスマホ使用だけで、すぐに深刻な問題が起こるわけではありません。ただし、以下のような様子が見られる場合は、かかりつけの小児科医や保健師さんに相談してみてください。
発達面で気になるサイン
- 月齢相当の言葉が出てこない、増えない
- 名前を呼んでも振り向かない、目が合いにくい
- あやしても笑わない、反応が薄い
- 同月齢の子と比べてコミュニケーションが取りにくいと感じる
ママ自身のサイン
- 授乳中にスマホがないと不安でたまらない
- 赤ちゃんの顔を見ることに興味が持てない
- 育児全般にやる気が出ない、つらいと感じる
最後のポイントは、産後うつの可能性もあります。「スマホに逃げてしまう」背景に、育児の疲れやストレスが隠れていることもあります。一人で抱え込まず、周囲の人や専門家に相談してくださいね。
まとめ
- 日本小児科医会は「授乳中のメディア視聴は止めましょう」と提言しています
- 赤ちゃんの目の焦点距離は約30cm、授乳中は親子のアイコンタクトに最適な距離
- スマホ使用中は赤ちゃんへの語りかけが16%減少するという研究結果も
- すべての授乳でスマホ禁止は現実的ではない。「赤ちゃんを見る時間」と「スマホOKの時間」のメリハリが大切
- 発達面で気になることがあれば、遠慮なく専門家に相談してください
授乳期間は長いようであっという間。すべてを完璧にする必要はありませんが、1日に何回かは赤ちゃんの顔を見つめながら「おいしい?」と声をかける時間を大切にしてみてくださいね。その積み重ねが、赤ちゃんの心と言葉の発達を支えてくれます。
📚 参考文献・引用元
- 1.日本小児科医会「子どもとメディアの問題に対する提言」 [ガイドライン] エビデンス: 高(学会提言)
- 2.東京大学・KDDI総合研究所「育児とICT―乳幼児のスマホ依存、育児中のデジタル機器利用、育児ストレス」 [research] エビデンス: 中(大学研究機関)
- 3.Mikhelson et al. Child Development「母親のスマホ使用と乳児への語りかけの関係」 [research] エビデンス: 中(査読付き論文)
- 4.神戸大学・東邦大学「授乳時における母親のスマートフォン操作と乳児のぐずりの関係調査」(2018年) [research] エビデンス: 中(大学研究機関)
⚠️ ご注意(免責事項)
- 本記事は情報提供を目的としており、医師の診断・治療の代替となるものではありません。
- お子さまの発達には個人差があります。気になる症状がある場合は、かかりつけの小児科医や保健師にご相談ください。
- 授乳中の過ごし方は各家庭の状況により異なります。無理のない範囲で取り入れてください。


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