【小児科ナースが解説】バイリンガル育児の誤解5選と科学的真実

The Truth About Bilingual Parenting まろんの日常

「英語教育を始めたいけど、日本語が遅れたらどうしよう…」

「2つの言語で子どもが混乱しないかな?」

こんな不安を抱えているママ・パパ、とても多いですよね。

実は私まろんも、息子が1歳のときに同じ悩みを抱えていました。英語の絵本を読み聞かせていたら、義母に「そんなことしたら日本語が遅れるわよ」と言われてしまって…。その日から、ネットで調べては不安になり、調べては安心し、の繰り返しでした。

でも小児科看護師として論文を読み込み、発達の専門家にも相談した結果、「よく言われる心配のほとんどは、科学的に否定されている」ということがわかったんです。

この記事では、バイリンガル育児にまつわる5つの誤解と、最新の研究が示す真実をお伝えします。

この記事でわかること

  • 「言葉が遅れる」「混乱する」は本当か?科学的な答え
  • 「早ければ早いほどいい」の落とし穴
  • 日本で英語教育をするときの現実的なポイント
  • 専門家への相談が必要なケースの見分け方

誤解①「バイリンガル育児は言葉の発達を遅らせる」→ 科学的に否定されています

これ、私も最初は信じかけていました。でも研究を調べてみると、まったく違う事実が見えてきたんです。

2001年のPetittoらの研究や、2002年のManeva & Geneseeの研究では、バイリンガル環境で育つ赤ちゃんも、モノリンガル(1言語)の赤ちゃんも、初めての言葉を話す時期(約12ヶ月)は同じだということが確認されています。喃語(なんご)の発達パターンにも差がないそうです。

「でも、うちの子は単語が少ない気がする…」と感じるママもいるかもしれません。

実はこれ、測り方の問題なんです。たとえば、日本語で「りんご」、英語で「apple」を知っている子がいたとします。これを「日本語の語彙」「英語の語彙」と別々に数えると少なく見えますが、「りんごという概念を知っている」という観点で見れば、モノリンガルの子と同じなんですよね。

1993年のPearsonらの研究では、両言語の語彙を合わせた「概念語彙」で比較すると、バイリンガル児とモノリンガル児に差がないことが示されています。

東京大学の池谷裕二教授(脳神経科学)も、「バイリンガル環境は、子どもの脳にとって負担にならない」と明言されています。MRI研究では、バイリンガルの子どもは各言語で異なる脳領域を使い、独立した回路を形成していることがわかっているそうです。

誤解②「2つの言語を同時に学ぶと子どもが混乱する」→ 赤ちゃんは賢いんです

これも私、すごく心配していました。息子が日本語と英語をごちゃまぜに話し始めたとき、「やっぱり混乱させちゃったかも…」と落ち込んだことがあります。

でも、研究結果を知って救われました。

1997年と2001年のBosch & Sebastián-Gallésの研究では、なんと生後4ヶ月の赤ちゃんが、似たリズムの言語(スペイン語とカタルーニャ語)でさえ正確に区別できることが示されています。8ヶ月の赤ちゃんは、話している人の口の動きだけで言語を見分けられるんだそうです。

さらに驚いたのは、1996年のGeneseeらの研究。2歳のバイリンガル児でも、話し相手に合わせて使う言語を切り替えられるというんです。

つまり、言葉を混ぜて話すのは「混乱」ではなく、「この人には日本語、あの人には英語」と理解したうえでの戦略的な行動なんですね。

息子も3歳を過ぎた頃から、自然と使い分けができるようになりました。あのとき焦らなくてよかった、と今では思います。

誤解③「早ければ早いほどいい」→ 日本では「質と継続」がカギ

「0歳から始めないと手遅れになる!」

こんな広告を見て、焦った経験はありませんか?私もありました。

確かに、「臨界期仮説」という考え方があり、言語習得には適した時期があるとされています。2018年のMIT/ハーバード大学の大規模調査(約67万人対象)では、文法習得能力は17.4歳頃まで高く維持されることがわかりました。

ただし、ここで重要なポイントがあります。

立命館大学の田浦秀幸教授は、「日本のようなEFL(外国語として英語を学ぶ)環境では、臨界期はあまり関係ない」と指摘しています。

どういうことかというと…週1〜2回の英語教室に通う程度では、「早く始めた」メリットはほとんど活かせないんです。

研究が示しているのは、「いつ始めるか」より「どれだけ質の高いインプットを、継続的に与えられるか」が大切ということ。

私自身、最初は「とにかく早く!」と焦っていましたが、今は毎日少しずつ、息子と一緒に英語の絵本を楽しむ時間を大切にしています。週1回の教室より、毎日10分の親子の時間のほうが効果的だと実感しています。

誤解④「親がネイティブじゃないと意味がない」→ 大丈夫、工夫次第です

「私の発音で大丈夫かな…」「変な英語を覚えさせちゃったら…」

これ、本当によく聞く悩みです。私も発音には自信がなくて、最初は英語で話しかけることに抵抗がありました。

でも、2024年に発表された14カ国46研究のレビューでは、非ネイティブの親によるバイリンガル育児でも、「親のコミットメント」「質の高いやりとり」「補完的なネイティブインプット」があれば成功できることが示されています。

つまり、完璧な発音より、愛情を持って一貫したコミュニケーションを続けることのほうが大切なんです。

私が実践しているのは、こんな工夫です。

  • 英語の歌やオーディオブックで「ネイティブの音」に触れる機会を作る
  • オンラインでネイティブスピーカーと交流できる機会を探す
  • 自分が自信を持てる表現から始める(完璧じゃなくてOK!)

息子は私の「日本人英語」と、動画の「ネイティブ英語」の両方を聞いて育っていますが、ちゃんと使い分けていますよ。子どもの適応力って、本当にすごいです。

誤解⑤「言葉を混ぜるのは問題のサイン」→ 実は正常な発達です

「ママ、これappleだよ!」「I want おやつ!」

こんなふうに2つの言語を混ぜて話す(コードスイッチング)のを聞くと、ドキッとしますよね。

でも、これは問題どころか、バイリンガルとして順調に育っている証拠なんです。

2000年のParadisらの研究では、幼児のコードスイッチングでさえ、大人と同じ文法規則に従っていることが確認されています。つまり、でたらめに混ぜているわけではなく、ちゃんとルールを理解したうえで使い分けているんです。

コードスイッチングには、こんな理由があります。

  • 片方の言語で言いたい単語が出てこないとき
  • より正確に表現したいとき
  • 相手に合わせているとき

叱ったり、無理に訂正したりする必要はありません。年齢とともに、場面に応じた使い分けが自然にできるようになりますよ。

日本で英語教育をするときに知っておきたいこと

ここまで「心配しなくて大丈夫」という話が多かったですが、日本特有の課題もお伝えしておきますね。

日本語と英語は「遠い」言語

米国国務省の分類では、日本語と英語は言語間距離が最も遠い組み合わせに位置しています。文法も、文字も、発音も、すべてが大きく違うんです。

だからこそ、スペイン語やフランス語を学ぶ英語圏の子どもたちより、より多くのインプットと時間が必要になります。

「週1回の教室」だけでは限界がある

田浦教授によると、高度な英語力を維持するには毎日2時間程度の「意味のある英語」への接触が必要だそうです。週1回のレッスンだけでは、正直なところ難しいのが現実です。

だからといって諦める必要はありません。大切なのは、日常の中に英語を「自然に」取り入れること

  • 朝の着替えのときに英語で声かけ
  • お風呂で英語の歌
  • 寝る前に英語の絵本

こんな小さな積み重ねが、長い目で見ると大きな差になります。

まずは日本語をしっかりと

これは声を大にして言いたいのですが、母語(日本語)の土台をしっかり作ることが最優先です。

中島和子教授(トロント大学名誉教授)は、「どちらか一方の言語で年齢相応の認知力を持っていることが、バイリンガルの要」と述べています。

日本語でしっかり考える力がついていれば、英語力は後からでも伸びます。焦って日本語をおろそかにするのは、本末転倒なんですよね。

こんなときは専門家に相談を

バイリンガル育児をしていると、「これは普通の発達?それとも相談したほうがいい?」と迷うことがありますよね。

以下のような場合は、小児科や言語聴覚士への相談をおすすめします。

早めに相談したほうがいいケース

  • 2歳を過ぎても、どちらの言語でも意味のある単語がほとんど出ない
  • 3歳を過ぎても、2語文(「ママ、きて」など)が出ない
  • 言葉の理解も表出も、両方の言語で明らかに遅れている
  • 以前できていたことができなくなった(言葉が減った、など)

様子を見ていいケース

  • 片方の言語の語彙が少ないが、もう片方では年齢相応
  • コードスイッチング(言葉の混ぜ方)が多い
  • 発音がまだ不明瞭だが、理解力はある

大切なのは、「両言語を合わせた総合的な言語力」で判断すること。片方だけ見て「遅れている」と決めつけないでくださいね。

心配なときは、一人で抱え込まず、専門家に相談してみてください。バイリンガル児の発達に詳しい専門家も増えていますよ。

まとめ

  • 「言葉が遅れる」「混乱する」は科学的に否定されている バイリンガル児の発達は、測り方を変えればモノリンガル児と同等です
  • 日本では「早さ」より「継続と質」が大切 週1回の教室より、毎日少しずつの親子時間が効果的
  • 親がネイティブでなくても大丈夫 愛情と一貫性があれば、工夫次第でバイリンガル育児は成功できます
  • コードスイッチングは問題ではなく、正常な発達の証拠
  • 母語(日本語)の土台をしっかり作ることが最優先

私自身、息子のバイリンガル育児を通じて、たくさんの不安と向き合ってきました。でも科学的な事実を知ることで、ずいぶん気持ちが楽になりました。

「完璧なバイリンガル」を目指す必要はありません。言葉のバランスは成長とともに変わるもの。10年、15年という長い目で見ながら、何より親子の絆を大切に、楽しく続けていくことが一番だと思います。

不安なことがあれば、いつでも専門家に相談してくださいね。あなたは一人じゃありませんよ。

📚 参考文献・引用元

⚠️ ご注意(免責事項)

  • 本記事は情報提供を目的としており、医師の診断・治療の代替となるものではありません。
  • お子さまの言語発達には個人差があります。気になる症状がある場合は、小児科や言語聴覚士にご相談ください。
  • 記事内の研究結果は一般的な傾向を示すものであり、すべてのお子さまに当てはまるわけではありません。
いつもシェアして下さりありがとうございます!少しでも色んな人に知識が行き渡りますように...!

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