「病院行くよ」と言った瞬間、子どもが大泣き…。待合室でも診察室でもギャン泣きで、周りの目も気になるし、親もぐったり。こんな経験、ありませんか?
小児科看護師として7年働いてきたわたし自身、数えきれないほどの泣き叫ぶお子さんを見てきました。そして自分の子どもも、やっぱり病院では泣くんです(笑)。でも、ちょっとした準備と声かけで、子どもの反応は驚くほど変わることも実感してきました。
今日は、現場で実際に使っているテクニックと、わたし自身の失敗談も含めてお話ししますね。
この記事でわかること
- 子どもが病院を怖がる本当の理由(年齢別)
- 受診前にできる「プレパレーション」のやり方
- 診察室で使える声かけテクニック
- 絶対に言ってはいけないNGワード
- 受診後の声かけで次回が楽になるコツ
子どもが病院を怖がる本当の理由
「注射が痛いから怖い」と思いがちですが、実はそれだけではないんです。静岡済生会総合病院の調査では、子どもたちが最も嫌だったのは「急な検査や、次に何が起こるのか分からないこと」だったそうです。
つまり、子どもの恐怖の本質は「予測不能なこと」への不安なんですね。これ、すごく大事なポイントです。
年齢によって恐怖のかたちが違います
【0〜1歳】
まだ言葉で説明しても理解できない時期。6〜7ヶ月頃から人見知りが始まり、知らない場所・知らない人への不安が出てきます。この時期は説明より「気をそらす」ことが効果的です。
【1〜3歳】
「今」が大事で気分に左右されやすい時期。「病院=注射=痛い=怖い」というイメージが一度できると、なかなか消えません。ごっこ遊びを通じて理解することが得意なので、お医者さんごっこが効果的です。
【3〜6歳】
想像力が発達して、目に見えない「おばけ」も怖がるように。でも同時に、時間の概念が芽生えて「未来のために今を我慢する」ことができるようになってきます。事前に説明することで不安を減らせる年齢です。
家庭でできる準備「プレパレーション」
「プレパレーション」とは、医療行為に対する心理的な準備をサポートすること。難しそうに聞こえますが、家庭でもできることはたくさんあります。
絵本やごっこ遊びで「知っている」状態をつくる
子どもは「知らないこと」が怖いんです。だから、病院で何をするか事前に知っていると、それだけで安心感が生まれます。
おすすめの絵本:
- 『ノンタンがんばるもん』(偕成社)…小児病棟でも使われる定番
- 『ひとまねこざる びょういんへいく』(岩波書店)…おさるのジョージが入院するお話
- 『からだの「なぜ?」えほん なぜちゅうしゃをするの?』…注射の仕組みをわかりやすく解説
お医者さんごっこのポイント:
- 子どもに「お医者さん役」をさせてあげる
- ぬいぐるみを患者さんにして診察ごっこ
- 「痛いかな?」「大丈夫だよ」と声かけの練習
「診察される側」から「診察する側」への視点転換で、未知への恐怖が薄れていきます。
いつ伝える?年齢別のタイミング
- 2〜3歳:数日前〜当日(遅くとも数時間前)
- 4〜6歳:1週間前〜前日
- 小学生以上:予定が決まったらなるべく早く
あまり早く伝えすぎると、小さい子は不安な時間が長くなってしまうことも。お子さんの性格に合わせて調整してくださいね。
【重要】親の不安は子どもに伝染します
これ、本当に大事なんです。心理学では「社会的参照」と呼ばれていて、子どもは未知の場面で親の表情や態度を手がかりにしています。
親が「大丈夫かしら…」と不安そうにしていると、子どもも「やっぱり怖いところなんだ」と感じてしまいます。演技でもいいので、できるだけ落ち着いた態度を心がけてみてください。
診察室で使える実践テクニック
ディストラクション(気そらし)の方法
処置中に別のことに注意を向けることで、痛みや緊張を和らげる方法です。
- 視覚:光るおもちゃ、キラキラするもの、動画
- 聴覚:お気に入りの歌を一緒に歌う、音の出るおもちゃ
- 触覚:ぎゅっと抱っこする、手を握る
WHOの指針でも、保護者による抱っこは子どもの安心感を高める最も効果的な方法とされています。座った状態での接種は、寝かせた状態より不安軽減効果があるというデータもあります。
注射の痛みを軽減するグッズ
最近は痛みを軽減するためのグッズも増えてきました。
麻酔テープ(ペンレステープ):リドカインを含む局所麻酔テープ。約30分〜1時間前に貼っておくと、針を刺す痛みが軽減されます。病院で相談してみてくださいね。
バズィービー(Buzzy Bee):振動と冷却を組み合わせたハチ型のデバイス。世界28カ国、5,000以上の医療機関で使われているそうです。麻酔テープが1時間かかるのに対し、30秒で効果が出るのがメリット。ただ、まだ日本では知名度が低いかもしれません。
絶対に言ってはいけないNGワード
ここからは、わたし自身も反省を込めてお伝えします。
「痛くないよ」がダメな理由
国立成育医療研究センターも明確に指摘しています。「痛くないよ」と言われたのに実際に痛かった場合、子どもは「だまされた」と感じます。そして、親や医療者への信頼が損なわれてしまうんです。
代わりに使いたい言葉は:
- 「チクッとするけど、すぐ終わるよ」
- 「ちょっと痛いかもしれないけど、ママ(パパ)がそばにいるからね」
その他のNGワード・NG行動
- 「散歩に行こう」とごまかして連れて行く
- 泣いたり嫌がったりする子を叱る
- 「言うこと聞かないと注射してもらうよ!」と脅す
- 「かわいそう」と言う(子ども自身が「自分はかわいそうな存在」と思ってしまう)
- 無理にぎゅうぎゅうと押さえつける
特に「病院=罰」というイメージを植え付けてしまうと、将来の医療受診への心理的なハードルが高くなってしまいます。
こんなときは専門家に相談を
今回は「病院を怖がる」ことへの対処法をお伝えしましたが、以下のような場合は小児科医や心理士に相談することをおすすめします。
早めに相談したほうがよいケース
- 病院のことを考えただけで強い身体症状(嘔吐、腹痛など)が出る
- 過去の医療体験がトラウマになっている様子がある
- 日常生活にも影響が出るほどの強い不安がある
様子を見てよいケース
- 病院では泣くが、終わった後はケロッとしている
- 年齢相応の反応(2〜3歳の泣きはよくあること)
- 事前準備で少しずつ改善が見られる
心配なときは、かかりつけの小児科で相談してみてくださいね。最近は「チャイルドライフスペシャリスト」という専門職がいる病院も増えています。
受診後の声かけで次回が変わる
具体的な行動を認める
「えらかったね」だけでなく、具体的に何ができたかを言葉にしてあげてください。
- 「チクッとして痛かったけど、最後まで頑張れたね」
- 「泣いてもいいんだよ。でも動かないでいられてすごかったね」
- 「自分でお名前言えたね」
- 「一人で椅子に座れたね」
小さな成功体験を言葉にすることで、「できた!」という自信につながります。
ご褒美より言葉の承認を
シールやお菓子のご褒美もいいですが、毎回だと効果が薄れてしまうことも。「物」より「言葉での承認」のほうが、長い目で見ると効果的です。
元気なときに「今日病院で頑張れたこと」を思い出して話したり、ぬいぐるみに注射ごっこをしたりするのも、次回への良いイメージづくりになりますよ。
まとめ
- 子どもが怖いのは「痛み」より「何が起こるかわからないこと」
- 年齢に合わせた事前準備(プレパレーション)で不安は軽減できる
- 「痛くないよ」は信頼を損なうNGワード。正直に伝えることが大切
- 親の落ち着いた態度が子どもの安心につながる
- 受診後は具体的な頑張りを言葉で認めてあげる
病院を「怖い場所」から「頑張れる場所」に変えるのは、一朝一夕にはいきません。でも、ちょっとした工夫の積み重ねで、確実に変わっていきます。
困ったときは一人で抱え込まず、かかりつけ医にも相談してみてくださいね。わたしたち医療者も、お子さんとご家族のサポートをしたいと思っています。
📚 参考文献・引用元
- 1.国立成育医療研究センター チャイルドライフサービス室「お子さんが注射を受けることになったとき」 [公式情報] エビデンス: 高
- 2.日本小児科学会「医療における子ども憲章」 [公式情報] エビデンス: 高
- 3.筑波大学発達支援看護学研究室「プレパレーションについて」 [ガイドライン] エビデンス: 中
- 4.済生会「病院嫌いにさせない!子どものためにできること」 [公式情報] エビデンス: 中
- 5.大阪母子医療センター「プレパレーションブック」 [ガイドライン] エビデンス: 中
⚠️ ご注意(免責事項)
- 本記事は情報提供を目的としており、医師の診断・治療の代替となるものではありません。
- お子さまの症状や状態には個人差があります。強い不安や身体症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。
- 記事内で紹介している製品・グッズについては、使用前に医療者にご相談ください。


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