「何度言っても聞かない」「つい手が出そうになってしまう」「叱りすぎて自己嫌悪…」——しつけに悩まないママ・パパはいないのではないでしょうか。私も小児科看護師として7年間働きながら子育てをしてきましたが、正直なところ「正解がわからない」と何度も悩みました。
でも安心してください。実は近年、脳科学や発達心理学の研究が進み、「効果があるしつけ」と「逆効果になるしつけ」が科学的に明らかになってきています。この記事では、最新のエビデンスに基づいて、0〜6歳のお子さんへの効果的なしつけ法を具体的にお伝えします。
この記事でわかること
- 体罰・厳しい叱責が子どもの脳に与える影響
- 年齢別(0〜1歳・1〜3歳・3〜6歳)の発達に合ったしつけ方
- かんしゃく・叩く行動への具体的な対処法
- 科学的に効果がある「褒め方」「叱り方」のフレーズ
- 専門家に相談すべきサイン
しつけの基本知識|科学が明らかにした事実
日本でも体罰は法律で禁止されています
2020年4月、日本は児童福祉法の改正により親による体罰を法律で全面禁止しました。さらに2022年12月には民法も改正され、明治時代から続いた「懲戒権」が削除されています。
厚生労働省のガイドラインでは、体罰を「身体に何らかの苦痛を引き起こし、または不快感を意図的にもたらす行為」と定義しています。頬を叩く、長時間正座させるといった行為だけでなく、「お前なんか生まれてこなければよかった」などの言葉も心理的虐待として禁じられています。
「しつけのためなら少しくらい…」と思う方もいらっしゃるかもしれません。でも、なぜ体罰がダメなのか、その理由を知ると考え方が変わるかもしれません。
体罰・暴言は子どもの脳を傷つける
福井大学の友田明美教授の研究チームは、MRI画像解析を用いて衝撃的な事実を明らかにしました。
体罰を受けた子どもでは、感情や思考をコントロールする「前頭前野」の容積が約19%縮小していることが確認されています。また、暴言を受けた子どもでは聴覚野が肥大し、言葉の理解やコミュニケーションに困難を抱えるリスクが高まることもわかっています。
友田教授は「最も脳にダメージを与えるのは言葉による暴力」と指摘しています。つまり、叩かなくても、厳しすぎる言葉は子どもの脳を傷つける可能性があるのです。
体罰は「効果がない」ことも科学的に証明
世界中の約16万人の子どもを対象とした大規模な研究分析でも、体罰の有害性は明確に示されています。体罰を受けた子どもは、攻撃性の増加、反社会的行動、うつや不安などの精神的健康問題、認知発達の低下、親子関係の質の悪化と関連していることがわかっています。
「短期的には言うことを聞くかもしれないけれど、長期的には逆効果になる」——これが科学の結論です。
では、どうすればいいの?
ここで登場するのが「ポジティブ・ディシプリン(肯定的しつけ)」という考え方です。これは世界36か国以上で実践されている、科学的に効果が確認されたしつけ法です。
基本原則は4つあります。
- 長期的な目標を決める:子どもにどんな力を身につけてほしいか明確にする
- 温かさと枠組みを与える:愛情と明確なルールのバランスをとる
- 子どもの考え方・感じ方を理解する:発達段階に応じた期待をする
- 問題を一緒に解決する:罰ではなく、どうすればいいか考える
この原則をベースに、年齢別の具体的な対応を見ていきましょう。
家庭でできる対処|年齢別しつけのポイント
【0〜1歳】しつけより「愛着形成」が最優先
この時期は、実は本格的な「しつけ」はまだ早いんです。0〜2歳頃までは、行動と結果の因果関係を理解する能力が十分に発達していないため、叱っても効果がないことが多いです。
この時期に大切なのは「愛着形成(アタッチメント)」。安定した愛着は、将来のしつけがスムーズにいく土台になります。
具体的にやること
- 泣いたらできるだけ早く対応し、不快を取り除く
- 抱っこやスキンシップで肌と肌の触れ合いを増やす
- 穏やかな声で「大好きだよ」と愛情を伝える
- 目を合わせながら関わる
「甘やかしすぎでは?」と心配になるかもしれませんが、この時期にたっぷり愛情を注ぐことが、後々の自立につながると考えられています。
【1〜3歳】イヤイヤ期は「自我の芽生え」のサイン
「魔の2歳児」とも呼ばれるイヤイヤ期。何を言っても「イヤ!」、自分でやりたがって時間がかかる…本当に大変ですよね。
でも、これは「自分でやりたい」という自我が芽生えている証拠。発達的には順調なサインなんです。一方で、感情をコントロールする前頭前野はまだ未発達。気持ちを言葉でうまく伝えられないもどかしさから、かんしゃくを起こすことも多いです。
効果的な対応
- 気持ちを代弁する:「○○したかったんだね」と言葉にしてあげる
- 選択肢を与える:「赤い服と青い服、どっちにする?」と自分で決めさせる
- 時間に余裕を持つ:「自分でやる」を見守る時間を確保する
- 一貫性を保つ:一度「ダメ」と言ったら最後まで変えない
避けたい対応
- 大声で怒鳴る
- 「もう知らない!」と突き放す
- 毎回要求を飲んでしまう
【3〜6歳】社会性が育つ時期のしつけ
3歳後半〜4歳頃から、簡単なルールや約束を守れるようになってきます。他の人の気持ちを理解し始め、「正しいことをしたい」という気持ちも芽生えてきます。
年齢別のポイント
3歳:まだ言葉だけでは伝わりにくいことも。親が見本を見せて「いっしょにやってみよう」と誘うのが効果的です。
4歳:周りの目を意識し始めます。「お友達はどう思うかな?」と考えさせるきっかけを作りましょう。
5歳:「ママは悲しいな」など、「私は〜」で始まる言い方(Iメッセージ)で気持ちを伝えると響きやすいです。叱った後は、必ず心を通わせる時間を作りましょう。
6歳:論理的な説明が理解できるようになります。感情的にならず、事実と理由を筋道立てて伝えましょう。
かんしゃくへの3ステップ対応
かんしゃくは1歳前から始まり、2〜4歳がピーク。5歳を過ぎると徐々に減っていくことが多いです。
ステップ1:気持ちを受け止める
「○○したかったんだね」「悔しかったね」と、まず気持ちを言葉にしてあげましょう。
ステップ2:落ち着くまでそばで見守る
完全に無視するのではなく、安全を確保しながら静かにそばにいます。
ステップ3:落ち着いたら話し合う
「何がいけなかったかな」「次はどうする?」と一緒に考えます。
叩く・噛む行動への対応
お子さんが叩いたり噛んだりする行動の背景には、言葉でうまく伝えられない抗議や、甘えの表れがあることが多いです。
対応の順序
- 行動を止める:手を押さえて「叩きません」と短く明確に伝える
- 理由を聞く:「○○が嫌だったの?」と気持ちを確認
- 望ましい行動を教える:「叩くんじゃなくて、『やめて』って言おうね」
絶対にやってはいけないこと:親が叩いて教えること。これは「叩いてもいい」というメッセージになり、攻撃性を強めてしまいます。
科学的に効果がある「褒め方」「叱り方」
神戸大学の研究では、褒め方・叱り方が将来の自己決定力や安心感に影響することがわかっています。
効果的な褒め方
- 「頑張ったね」(努力を評価)→ 最も効果的
- 「たくさん練習したね」(プロセスを褒める)
- 「諦めずに最後まで取り組んだね」(姿勢を認める)
避けたい褒め方
- 「えらいね」だけ(何がえらいかわからない)
- ご褒美で釣る(長期的には逆効果になりやすい)
効果的な叱り方
- 「次は頑張ろうね」(励まし)→ 最も効果的
- 行動を叱り、人格は否定しない
- 「走らないで」ではなく「歩こうね」(肯定文で伝える)
- 短く、わかりやすく
避けたい叱り方
- 「どうしてできないの!」(責める)
- 「ダメな子ね」(人格否定)
- 罰を与える(長期的には逆効果)
こんなときは専門家に相談を
しつけの悩みはどの家庭にもありますが、以下のような場合は一人で抱え込まず、専門家に相談することをおすすめします。
早めに相談した方がよいサイン
- かんしゃくが5歳を過ぎても頻繁に続く、または激しさが増している
- 自分や他人を傷つける行動が繰り返される
- 園や学校での集団生活に著しく支障が出ている
- 親自身が「手を上げてしまいそう」「限界」と感じている
- 子どもが極端に怯えている、または無気力になっている
相談できる場所
- かかりつけの小児科:発達の相談もできます
- 市区町村の子育て相談窓口・保健センター:無料で相談できます
- 地域子育て支援拠点(子育てひろば):気軽に立ち寄れます
- 児童相談所相談専用ダイヤル:0570-783-189
相談することは「ダメな親」の証拠ではありません。子どものために行動できる素晴らしい親御さんです。
まとめ
- 体罰や厳しい叱責は、短期的に従わせても長期的には逆効果。子どもの脳にダメージを与えることが科学的に証明されています
- 0〜1歳は愛着形成が最優先。しつけは発達に合わせて徐々に
- 1〜3歳のイヤイヤ期は自我の芽生え。気持ちを代弁し、選択肢を与える対応が効果的
- 褒めるときは「努力」「プロセス」を具体的に。叱るときは「行動」を叱り、「人格」は否定しない
- 完璧を目指さなくて大丈夫。失敗してもやり直す姿勢が大切です
子育てに正解はないと言われますが、科学が教えてくれる「より良い方法」はあります。一人で抱え込まず、困ったときは周囲や専門家に頼ってくださいね。私も小児科看護師として、そしてママとして、皆さんを応援しています。
📚 参考文献・引用元
- 1.厚生労働省「体罰等によらない子育てのために〜みんなで育児を支える社会に〜」 [公式情報] エビデンス: 高
- 2.日本小児科学会「子ども虐待診療の手引き」第3版 [ガイドライン] エビデンス: 高
- 3.友田明美教授(福井大学)マルトリートメントと脳発達に関する研究 [research] エビデンス: 高
- 4.神戸大学「子どもの褒め方、叱り方が将来に影響する」研究 [research] エビデンス: 高
- 5.ポジティブ・ディシプリン(セーブ・ザ・チルドレン) [ガイドライン] エビデンス: 高
⚠️ ご注意(免責事項)
- 本記事は情報提供を目的としており、医師や専門家の診断・指導の代替となるものではありません。
- お子さまの発達や行動には個人差があります。気になることがある場合は、かかりつけの小児科や専門機関にご相談ください。
- 本記事の情報は2024年時点のものです。最新の情報は各公的機関のウェブサイトでご確認ください。


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