「野菜を食べてくれないから、せめてサプリで栄養を補いたい」「母乳だけで育てているけど、ビタミンは足りてる?」——こんな不安を抱えていませんか?
ドラッグストアには子ども用のグミサプリがずらりと並び、「念のため飲ませておこうかな」と思う気持ち、よくわかります。でも実は、健康な子どもへの「念のためサプリ」は、日本の専門機関では推奨されていないんです。
一方で、2025年3月に日本小児科学会が発表した最新の提言では、ある栄養素については「サプリメントを検討してもよい」と初めて公式に認められました。
この記事では、7年の小児科勤務経験をもとに、本当にサプリが必要なケースと食事で十分なケースを、最新のエビデンスに基づいてお伝えします。
この記事でわかること
- 健康な乳幼児にサプリメントが基本的に不要な理由
- 例外的にサプリが必要になる具体的なケース(ビタミンD・K・鉄分など)
- 2025年日本小児科学会の最新ビタミンD提言のポイント
- 子ども用サプリの過剰摂取リスクと安全な使い方
- 食事で栄養を補うための具体的な方法
基本の考え方:健康な子どもにサプリは原則不要
まず結論からお伝えすると、バランスの良い食事を取れている健康な乳幼児には、サプリメントは基本的に必要ありません。
これは厚生労働省、日本小児科学会、国立健康・栄養研究所など、日本の主要な専門機関が一致して示している見解です。
国立健康・栄養研究所は次のように警鐘を鳴らしています。「乳幼児期(0〜6歳)はからだが未発達で、食べたものの影響を大きく受けます。サプリメントは医薬品と違い、安全性・有効性が十分に確保されていません」。
お子さんの好き嫌いやムラ食い、小食で心配になる気持ちはよくわかります。でも、これらは発達段階の特徴であり、成長とともに自然と改善していくことが多いんです。「うちの子、本当に栄養足りてるのかな…」と不安なときは、まず乳幼児健診や小児科で相談してみてくださいね。
例外①:ビタミンKは全ての赤ちゃんに必須
サプリメントは基本不要とお伝えしましたが、ビタミンKだけは例外です。これは全ての新生児に医療行為として投与されます。
赤ちゃんは生まれたときビタミンKの蓄えが少なく、母乳にもビタミンKはあまり含まれていません。不足すると「ビタミンK欠乏性出血症」という病気を起こし、特に生後2週間以降に発症する「遅発型」は脳内出血を起こすと命に関わることもあります。
2021年に日本小児科学会を含む13の学会・団体が共同で提言を発表し、従来の「3回法」から「3か月法」(生後3か月まで週1回投与)への移行が推奨されるようになりました。産院で「ビタミンKシロップを飲ませますね」と説明を受けた方も多いと思います。これはお子さんを守るためのとても大切な医療行為ですので、安心して受けてくださいね。
例外②:ビタミンDは2025年に転換点を迎えた
2025年3月、日本小児医療保健協議会栄養委員会から画期的な提言が発表されました。日本で初めて、ビタミンDサプリメントが公式に「選択肢」として認められたのです。
日本の乳児の約半数がビタミンD不足という現実
この提言の背景には、深刻な実態があります。日本の研究によると、0〜5か月の赤ちゃんの約52%がビタミンD欠乏状態。母乳栄養中心の赤ちゃんでは、なんと75%がビタミンD不足という報告もあります。
「え、母乳で育てているのに足りないの?」と驚かれるかもしれません。実は母乳に含まれるビタミンDは非常に少なく、粉ミルクの約10分の1程度。母乳だけでは「日本人の食事摂取基準」の目安量に届かないことが多いのです。
ビタミンDが不足すると、骨の発育に影響が出る「くる病」のリスクが高まります。実際、くる病の患者数はこの5年間で3倍以上に増えているんです。
なぜビタミンD不足が増えているの?
主な原因として考えられているのは以下の点です。
- 紫外線対策の普及(日焼け止め、帽子、長袖など)
- 外遊びの時間の減少
- 母乳栄養の普及(母乳中のビタミンDは少ない)
- 妊娠中のお母さん自身のビタミンD不足
ビタミンDは食事からだけでなく、日光を浴びることで皮膚でも作られます。でも現代の生活では、十分な日光浴が難しくなっているんですね。ちなみに、窓ガラス越しの日光ではビタミンDは作られません。
提言で示された6つの対策
日本小児科学会の提言では、以下の対策が示されています。
- 小児期・青年期からビタミンDを充足させる生活・食事習慣をつくる
- 母乳のビタミンD含有量は少ないが、母乳栄養を妨げるべきではない
- 適度な外気浴・外遊びを心がけ、過度な日焼け止め使用を避ける
- 離乳食を適切な時期に開始する
- ビタミンDとカルシウムを適切に摂取する
- 生活・食事環境の改善が困難な場合は、天然型ビタミンDサプリメントの使用を医師の指導のもとで検討する
大切なポイントは、サプリメントはあくまで「生活・食事環境の改善が困難な場合の選択肢」ということ。「全員がサプリを飲むべき」という意味ではありません。まずは適度な外遊びや、鮭・しらす・卵黄などビタミンDを含む食品を離乳食に取り入れることから始めてみてくださいね。
鉄分:サプリより離乳食での対応が基本
「鉄分が足りないと発達に影響する」という話を聞いて、鉄サプリを検討している方もいるかもしれません。確かに鉄分は大切ですが、基本は離乳食からの摂取です。
鉄分不足が起きやすい時期
赤ちゃんは生まれるとき、お母さんから「貯蔵鉄」をもらって生まれてきます。この貯蔵鉄は生後6か月頃から減り始め、鉄不足のリスクが高まるのは生後6〜24か月です。
厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド」にも「母乳育児の場合、生後6か月時点で鉄欠乏を生じやすい」と明記されています。
離乳食で鉄分を補う方法
鉄分を多く含む食品を、離乳食が進んできたら積極的に取り入れましょう。
- 赤身の肉(牛肉、豚肉)
- レバー(鶏レバーは比較的食べやすい)
- 赤身の魚(マグロ、カツオ)
- 大豆製品(豆腐、納豆)
- 小松菜、ほうれん草
ビタミンCと一緒に摂ると吸収率がアップするので、野菜や果物と組み合わせるのがおすすめです。
フォローアップミルクは必須ではない
「鉄分強化」をうたうフォローアップミルクが気になる方もいると思います。でも実は、日本小児科学会もWHOも「フォローアップミルクは必ずしも必要ではない」との立場です。
離乳食がしっかり進んでいれば、食事から鉄分を摂ることができます。「離乳食があまり進まない」「成長曲線が気になる」という場合は、小児科や乳幼児健診で相談してみてくださいね。
その他のサプリメントについて
DHAは魚から摂るのが基本
「頭が良くなる」というイメージのあるDHA。確かに脳の発達に重要な栄養素ですが、サプリメントとしての積極的な推奨はされていません。
東京慈恵会医科大学の2023年の研究では、「粉ミルクにはDHAが添加されているにもかかわらず、その効果は母乳に劣る」と報告されています。DHAは鮭やサバなどの魚から摂取するのが基本です。離乳食が進んできたら、お魚を取り入れてみてくださいね。
プロバイオティクス(乳酸菌)
「腸内環境を整える」「アレルギー予防に」というイメージがありますが、日本小児アレルギー学会の見解では「湿疹の発症を予防する可能性はあるが、他のアレルギーを予防する効果は認められない」とされています。
便秘や下痢のときにビオフェルミンなどを使うことはありますが、アレルギー予防目的での長期使用については、十分なエビデンスがないのが現状です。
マルチビタミン
「念のため」とマルチビタミンを飲ませたくなる気持ちはわかります。でも、米国小児科学会も日本の専門機関も、さまざまな食物を食べている健康な子どもにはマルチビタミンを推奨していません。
サプリメントの過剰摂取リスクを知っておこう
「足りないよりは多い方がいいのでは?」と思うかもしれませんが、サプリメントには過剰摂取のリスクがあります。特に子どもは体が小さいため、影響を受けやすいんです。
脂溶性ビタミンは蓄積しやすい
ビタミンA、D、E、Kは脂溶性ビタミンと呼ばれ、体に蓄積しやすい性質があります。
- ビタミンA過剰:頭痛、皮膚の異常、肝臓への影響
- ビタミンD過剰:血液中のカルシウムが増えすぎ、臓器に�ite積する
2024年12月には、海外製の鉄サプリメントを長期間摂取して「鉄過剰症」を発症した事例が国民生活センターから報告されています。
グミタイプサプリの誤飲・過剰摂取に注意
子ども用のグミサプリは、お菓子と間違えやすいという問題があります。実際に、5歳のお子さんが鉄グミを10粒(110mg)食べてしまった事例も報告されています。
米国では毎年約4,600人の子どもがサプリメントが原因で救急治療室に搬送されており、その多くがビタミン・ミネラル製品の誤飲です。
もしサプリメントを使う場合は、お子さんの手の届かない場所に保管し、「これはお薬だから○個だけね」と伝えることが大切です。
こんなときは医師・栄養士に相談を
以下のようなケースでは、自己判断せずに専門家に相談することをおすすめします。
今すぐ相談した方がよいケース
- 成長曲線から大きく外れている(体重が増えない、身長が伸びない)
- 極端な偏食で、ほとんど決まったものしか食べない
- 顔色が悪い、疲れやすいなど貧血の症状がある
次の健診や受診時に相談するとよいケース
- 食物アレルギーで複数の食品を除去している
- 母乳のみで育てていて、外出の機会が少ない
- 離乳食がなかなか進まない
- 野菜や魚をほとんど食べてくれない
心配なときは、遠慮なく小児科や乳幼児健診で相談してくださいね。「こんなことで相談していいのかな」と思わなくて大丈夫。お子さんの栄養について一緒に考えてくれますよ。
まとめ
- 健康な乳幼児には「念のため」のサプリメントは基本的に不要——バランスの良い食事からの栄養摂取が第一です
- ビタミンKは全ての新生児に必要——産院での投与を受けましょう
- ビタミンDは2025年から「必要に応じて検討」に——まずは適度な外遊びと食事での対応を。それでも難しい場合は医師に相談
- 鉄分は離乳食からの摂取が基本——赤身肉や魚、大豆製品を積極的に
- サプリメントには過剰摂取のリスクがある——特にグミタイプは誤飲に注意
「うちの子、栄養足りてるかな?」と心配になる気持ちは、お子さんを大切に思うからこそ。でも、多くの場合は食事の工夫で対応できます。迷ったときは一人で抱え込まず、小児科や乳幼児健診で気軽に相談してくださいね。
📚 参考文献・引用元
- 1.乳児期のビタミンD欠乏の予防に関する提言(日本小児医療保健協議会栄養委員会) [ガイドライン] エビデンス: 高(ガイドライン)
- 2.新生児と乳児のビタミンK欠乏性出血症発症予防に関する提言(日本小児科学会) [ガイドライン] エビデンス: 高(ガイドライン)
- 3.授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)(厚生労働省) [公式情報] エビデンス: 高
- 4.子どものサプリメント利用の考え方(国立健康・栄養研究所) [公式情報] エビデンス: 高(専門機関)
- 5.小児および10代の若者のサプリメント利用について知っておくべき10のこと(厚生労働省eJIM) [公式情報] エビデンス: 高(専門機関)
⚠️ ご注意(免責事項)
- 本記事は情報提供を目的としており、医師の診断・治療の代替となるものではありません。
- お子さまの症状や状態には個人差があります。気になる症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。
- サプリメントの使用を検討される場合は、必ず小児科医にご相談ください。


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