「うちの子、毎日おままごとばかりしているけど大丈夫かな?」「お友達とごっこ遊びをしないのは発達が遅れているのかな?」そんな風に心配になったことはありませんか?
実は、ごっこ遊びは単なる「遊び」ではなく、子どもの発達を支える大切な「学び」なんです。厚生労働省の保育所保育指針でも、ごっこ遊びは子どもの成長に欠かせない活動として位置づけられています。
この記事では、小児科看護師として7年間たくさんのお子さんと関わってきた経験をもとに、ごっこ遊びで育まれる力や、年齢別・遊び方別の特徴、そして親御さんの関わり方のコツをお伝えします。
この記事でわかること
- ごっこ遊びで育まれる5つの力
- 2歳・3〜4歳・5〜6歳の年齢別ごっこ遊びの特徴
- おままごと・お医者さんごっこなど遊び別の効果
- 想像力を広げる声かけのコツと避けたい関わり方
- 発達が気になるときの相談先
ごっこ遊びとは?なぜ子どもの発達に大切なの?
ごっこ遊びとは、子どもが何かになりきったり、物を別のものに見立てて遊ぶことです。積み木を電話に見立てて「もしもし」と言ったり、お人形にミルクを飲ませたり、お店屋さんになりきってやりとりしたり…。こうした遊びは、発達心理学では「象徴遊び」や「ふり遊び」とも呼ばれています。
ごっこ遊びで育まれる5つの力
研究によると、ごっこ遊びは子どもの様々な能力の発達と関連していることがわかっています。
1. 想像力・創造性
目の前にないものをイメージして表現する力が育ちます。バナナをマイクに見立てたり、段ボールを車にしたり…。こうした「見立て」ができるのは、脳の中で「象徴機能」が発達している証拠です。
2. 言語能力
35件の研究(約6,800人の子ども)を分析したメタ分析では、ごっこ遊びと言語の発達に正の関連があることが確認されています。ごっこ遊びの中で、子どもは新しい言葉を使ったり、会話のやりとりを練習したりしています。
3. 社会性・コミュニケーション力
お友達と一緒にごっこ遊びをする中で、役割を決めたり、順番を待ったり、相手の気持ちを想像したりする経験を積みます。34件の研究を含むメタ分析でも、ごっこ遊びと社会的能力の間に正の関連が報告されています。
4. 感情調整力
ごっこ遊びでは、嬉しい・悲しい・怒りなど様々な感情を表現します。安全な「ごっこ」の世界で感情を体験することで、自分の気持ちをコントロールする練習になると考えられています。
5. 思いやりの心
お人形のお世話をしたり、お医者さんごっこで「大丈夫?」と声をかけたり。慶應義塾大学との共同研究では、人形遊びの時間が長い子は他者への共感行動が多い傾向があったと報告されています。
【年齢別】ごっこ遊びの発達段階
ごっこ遊びは年齢によって少しずつ形が変わっていきます。お子さんの年齢に合った遊び方を知っておくと、「うちの子、ちゃんと成長しているんだな」と安心できますよ。
2歳頃:「見立て遊び」のはじまり
2歳頃は、ごっこ遊びの芽生えの時期です。
- 積み木を電話に見立てて「もしもし」と言う
- 砂をケーキに見立てて「はいどうぞ」と渡す
- お人形にミルクを飲ませる、寝かしつける
この時期は一人遊びが中心で、ママやパパの行動を単純にまねする「再現遊び」が主体です。お友達と一緒にいても、実際にはそれぞれ別の遊びをしている「並行遊び」の段階なので、一緒に遊べなくても心配いりません。
3〜4歳:本格的なごっこ遊びへ
3歳になると、おままごと、お店屋さんごっこ、お医者さんごっこなど、本格的なごっこ遊びが始まります。
- 絵本やアニメのキャラクターになりきる
- 自分でストーリーを考えながら遊ぶ
- 「私がママね」「じゃあ僕はパパ」と役割を決める
4歳頃になると「協同的ごっこ遊び」へと移行します。「もうすぐ雨が降りそうだよ」「傘を持っていったら?」など、お友達とイメージを共有してストーリーを発展させられるようになります。役割の取り合いでケンカになることもありますが、これも社会性が育っている証拠です。
5〜6歳:遊びが精緻化する
5〜6歳になると、子どもだけで複雑な役割や物語を設定できるようになります。
- 本物らしさにこだわる(ピザ屋さんごっこで具材まで再現するなど)
- 数日にわたって続く「プロジェクト型」のごっこ遊び
- 子ども同士でルールを作り、話し合いで設定を決める
この時期には想像と現実を明確に区別する力も発達しています。「ごっこ」として演じていることと現実の違いをちゃんと理解しているので、安心して見守ってあげてくださいね。
【遊び別】それぞれのごっこ遊びで育まれる力
ごっこ遊びにはいろいろな種類がありますが、それぞれに育まれる力が少しずつ違います。お子さんの好きな遊びから、どんな力が育っているのか見てみましょう。
おままごと:観察力と語彙力がアップ
おままごとは最も身近なごっこ遊びの代表格です。
育まれる力:
- 「切る」「混ぜる」「炒める」など動詞の語彙が増える
- 親の行動を細かく観察して再現する観察力・記憶力
- 相手役の気持ちを考える共感力
おままごとセットを選ぶときは、木製やフェルト製など素材感のあるものがおすすめです。リアルすぎないシンプルなおもちゃの方が、子どもの想像力が広がりやすいと言われています。
お医者さんごっこ:病院への不安を和らげる
お医者さんごっこには、思いやりの心を育てる効果があります。
育まれる力:
- 「どうしたんですか?」「大丈夫ですか?」と相手を気遣う言葉
- 注射器を押したり聴診器を当てたりする手指の発達
- 病院への苦手意識を和らげる効果
聴診器や注射器などの道具に慣れておくと、実際の診察時の不安が軽減されることがあります。予防接種の前に「お医者さんごっこしようか」と誘ってみるのも良いですね。
お店やさんごっこ:数の概念と対人スキル
お店やさんごっこは、自然な形で学びにつながる遊びです。
育まれる力:
- 「○個ください」「○○円です」で数量感覚が身につく
- 「どうぞ」「ありがとう」のやりとりで対人スキルが向上
- 商品を考えたり説明したりする想像力・表現力
レジスターのおもちゃや、お金のおもちゃを使うと、より遊びが広がります。本物のお金を使う必要はなく、紙で作ったお金でも十分楽しめますよ。
ヒーローごっこ・プリンセスごっこ:想像力と表現力
ファンタジーの世界を再現する遊びは、より自由度が高く想像力の発達に貢献します。
育まれる力:
- なりきることで表現力がアップ
- 誰かを助ける・守るストーリーで思いやりの心が育つ
「男の子の遊び」「女の子の遊び」と区別する必要はありません。おままごとが好きな男の子も、ヒーローごっこに加わりたい女の子も自然にいます。ただし、戦いごっこではケガやヒートアップに注意が必要です。「痛くしない」「イヤと言われたらやめる」などのルールを一緒に決めておきましょう。
お人形・ぬいぐるみ遊び:情緒の安定と共感力
お人形やぬいぐるみとの遊びは、情緒発達に良い影響があると言われています。
育まれる力:
- お世話をすることで思いやりの心が育つ
- ぬいぐるみに話しかけることで言葉の練習になる
- 安心感を得られる「移行対象」としての役割
動いたり喋ったりしないシンプルなお人形の方が、子ども自身が会話を想像するため、かえって想像力が広がるとも言われています。
想像力を広げる声かけのコツ
ごっこ遊びに関わるとき、どんな声かけをすれば良いか迷いますよね。ポイントは「指示」ではなく「問いかけ」で、子どもの自由な発想を促すことです。
効果的な声かけの例
- 「どこから来たの?」「誰を守ってくれているの?」(想像を広げる質問)
- 「○○はどうしたのかな〜?」(行き詰まったときの新展開のきっかけ)
- 「パンが食べたいけど、メロンパンあったかな?」(一緒に遊ぶときは役になりきって)
- 「素敵なお料理ができたね」(遊び終わりに認める言葉)
避けたい関わり方
- 「そんなのおかしいよ」と否定する
- 遊びの展開を親が決めてしまう
- 「本当はそうじゃないよ」と現実と違うことを指摘する
- 集中しているときに話しかけて中断させる
- 他の子と比較して褒める
子どもが一人で集中しているときは、そっと見守ることも大切です。遊び終わったタイミングで「何を作ったの?」「どんなお話だったの?」と声をかけてあげると、子どもは「見てもらえている」と感じて嬉しくなりますよ。
こんなときは専門家に相談を
「うちの子、ごっこ遊びをしないけど大丈夫かな?」と心配になることもあるかもしれません。でも、ごっこ遊びをしないだけで発達の遅れを心配する必要はありません。子どもの成長には大きな個人差があり、ごっこ遊びを始める時期はお子さんそれぞれで違います。
気にしすぎなくて大丈夫なケース
- 車を走らせる、物を並べるなど、別の遊びを楽しんでいる
- 一人でブツブツ言いながら遊んでいる(これもごっこ遊びの一種です)
- お友達より遊びの種類が少ない気がするが、元気に過ごしている
相談を検討してもよい目安
以下のような様子が複数見られ、気になる場合は相談してみてもよいでしょう。
- おもちゃを本来の遊び方で使わない(投げる、特定の部分だけに興味を示すなど)
- 言葉は出ているが、遊びの幅がなかなか広がらない
- 他の子どもとの遊びの共有が難しい
- 名前を呼んでも振り向かない、目が合いにくい
これらは一つの目安であり、単独の行動だけで判断するものではありません。心配なときは抱え込まず、専門家に相談してみてくださいね。
相談できる場所
- かかりつけの小児科:まずは普段診てもらっている先生に相談
- 地域の保健センター:乳幼児健診や発達相談を無料で受けられます
- 発達支援センター・児童発達支援センター:心理士や言語聴覚士などの専門家に相談できます
相談することは診断を受けることとイコールではありません。「ちょっと聞いてみたい」という気軽な気持ちで大丈夫ですよ。
まとめ
- ごっこ遊びは想像力・言語力・社会性・感情調整力・思いやりの心を育む大切な「学び」
- 2歳は見立て遊び、3〜4歳で本格化、5〜6歳で精緻化と、年齢で遊び方が変化する
- おままごと・お医者さんごっこ・お店やさんごっこなど、遊びの種類ごとに育まれる力が違う
- 親は「否定しない」「指示しない」「問いかけで広げる」を意識した声かけを
- ごっこ遊びをしないだけでは心配不要。気になることがあれば専門家に気軽に相談を
ごっこ遊びに「正解」はありません。お子さんが楽しんでいるなら、それが一番です。忙しい毎日の中で、1日5分でも一緒に遊ぶ時間を作れたら、それだけで十分。お子さんのペースを大切に、ごっこ遊びの世界を一緒に楽しんでくださいね。

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