「夜中に子どもが熱を出した…どうしよう」
そんな経験、子育て中のママ・パパなら一度はあるのではないでしょうか。私は小児科で7年間看護師として働いてきましたが、いざ自分の子どもが夜中に高熱を出したとき、正直焦ってしまいました。
この記事では、私自身の体験談を交えながら、夜間の発熱対応と夫婦で乗り切るコツをお伝えします。
この記事でわかること
- 子どもの発熱の基本的な考え方
- 夜間に慌てないための家庭でのケア方法
- すぐに受診すべきサインと様子見でよい場合の違い
- #8000(小児救急電話相談)の上手な活用法
- 夫婦で発熱対応を乗り切る連携のコツ
子どもの発熱、基本を知っておこう
発熱は体が病気と戦っている証拠
お子さんが熱を出すと「早く下げなきゃ」と思いがちですが、実は発熱は体がウイルスや細菌と戦うために免疫力を高めている反応なんです。体温が上がることで、免疫細胞の働きが活発になり、病原体の増殖が抑えられると考えられています。
一般的に、脇の下で測って37.5℃以上を発熱と呼ぶことが多いですが、乳幼児は平熱が高めの傾向があります。普段から、元気なときにお子さんの平熱を把握しておくと、発熱時の判断がしやすくなりますよ。
熱が高い=重症とは限らない
「39度も熱がある!」と聞くと心配になりますよね。でも、熱の高さだけで病気の重さは判断できません。大切なのは、お子さんの全体的な様子を見ることです。
40度の熱があっても、水分が摂れていて、比較的機嫌よく過ごせているなら、翌朝の受診でも大丈夫なことが多いです。反対に、38度台でもぐったりして反応が鈍い場合は、早めの受診を考えた方がよいでしょう。
子どもが発熱しやすい理由
小学校に入る頃までは、周囲からの感染の機会が多く、免疫反応もまだ発達途中のため、よく熱を出します。保育園に通い始めると、次から次へと風邪をもらってくるのは、どのご家庭でも経験があるのではないでしょうか。
子どもの発熱の多くはウイルス性の風邪で、特効薬がないことも多いため、基本的には体の免疫力に頼って自然に回復していきます。
夜間の発熱、家庭でできる対処法
まず確認してほしい3つのポイント
夜中にお子さんの発熱に気づいたら、まず次の3点を確認してみてください。
①意識・反応:名前を呼んだり話しかけたりしたとき、いつも通り反応しますか?視線が合いますか?
②呼吸の様子:息が苦しそうではないですか?ゼーゼー、ヒューヒューと音がしていませんか?
③水分摂取:少しずつでも水分を飲めていますか?おしっこは出ていますか?
これらに問題がなければ、多くの場合は翌朝の受診で大丈夫です。
体温調節のコツ
発熱時の体温調節は、お子さんの手足の温度を目安にするとわかりやすいです。
手足が冷たいとき(熱の上がり始め):寒気を感じていることが多いので、温かくしてあげましょう。布団を掛けたり、靴下を履かせたりしてOKです。
手足が温かくなったら(熱が上がりきった状態):熱がこもらないよう、薄着にして涼しくしてあげましょう。汗をかいたらこまめに着替えさせてください。
「熱があるときは厚着をして汗をかかせれば治る」という話を聞いたことがあるかもしれませんが、これは医学的には正しくありません。むしろ脱水のリスクが高まるので注意が必要です。
水分補給のポイント
発熱時は汗や呼吸で水分が失われやすくなります。脱水を防ぐために、こまめな水分補給を心がけましょう。
おすすめは経口補水液です。体への吸収が早く、失われた電解質も補給できます。なければ、薄めたスポーツドリンク、湯冷まし、麦茶などでもOKです。
一度にたくさん飲ませる必要はありません。スプーンやストローで少しずつ、お子さんが飲みたいタイミングで与えてあげてください。
食事は無理をしなくて大丈夫
発熱時は食欲が落ちることがほとんどです。水分が摂れていれば、無理に食べさせる必要はありません。
食べられそうなときは、お粥やうどん、ゼリー、バナナ、りんごなど、消化がよく刺激の少ないものがおすすめです。アイスクリームやプリンなど、冷たくて食べやすいものを欲しがることもありますが、適度であれば問題ありません。
解熱剤の使い方
解熱剤は、38.5℃以上の発熱があって、お子さんがつらそうにしているときに使用を検討しましょう。ただし、解熱剤は症状を和らげるもので、病気を治す薬ではありません。
熱が高くても、お子さんが比較的元気に過ごせているなら、無理に使う必要はないことが多いです。かかりつけ医の指示に従って使用してくださいね。
入浴について
「熱があるときはお風呂に入れてはいけない」と言われることもありますが、医学的には必ずしもそうではありません。
ぐったりしているときは避けた方がよいですが、比較的元気で本人が嫌がらなければ、ぬるめのお湯にさっと入ったり、シャワーを浴びたりしても大丈夫です。発熱時は汗をかきやすいので、清潔を保つことも大切です。
ただし、長湯は避け、湯冷めしないよう注意してください。冬場は脱衣所や浴室を事前に温めておくとよいでしょう。
こんなときは受診を
【今すぐ救急受診】が必要な症状
以下の症状がある場合は、夜間・休日でもすぐに救急外来を受診してください。
- 生後3か月未満の発熱:38℃以上の熱があれば、重症感染症の可能性があるためすぐに受診が必要です
- 意識がもうろうとしている:ぼんやりして呼びかけへの反応が鈍い、視線が合わない
- けいれんが5分以上続く:または、けいれんが止まっても意識が戻らない
- 呼吸困難:息が苦しそう、肋骨の間がペコペコ凹む、唇が紫色になっている
- ぐったりして水分が全く摂れない
【当日中に受診】した方がよい症状
- 生後3か月〜1歳で、39℃以上の発熱が続いている
- 熱が高く、ぐずりがひどくてなかなか泣き止まない
- 発熱に加えて、発疹が出てきた
- 耳を痛がる、のどが痛いと訴える
- おしっこの回数が極端に減っている
【翌日の受診でOK】な場合
- 熱があっても機嫌が比較的よく、水分も摂れている
- 食欲は落ちているが、少しは食べられている
- ぐっすりとは言えなくても、眠れている
- 発熱以外に気になる症状がない
3歳以上のお子さんで、ワクチン接種が完了していれば、熱の高さに関わらず「状態」がよければ夜間受診は必要ないことがほとんどです。
迷ったら#8000を活用しよう
「受診した方がいいのかな…」と迷ったときは、#8000(小児救急電話相談)に電話してみましょう。全国統一の番号で、お住まいの都道府県の相談窓口につながり、小児科医師や看護師からアドバイスを受けられます。
実施時間は地域によって異なりますが、夜間・休日に対応しています。受診の目安や家庭でのケア方法など、症状に応じた具体的なアドバイスがもらえるので、一人で悩まずに相談してみてくださいね。
電話をかける前に、お子さんの月齢・年齢、体温、いつから熱があるか、他にどんな症状があるかなどを整理しておくと、スムーズに相談できます。
熱性けいれんが起きたときの対処法
発熱に伴って、突然けいれんを起こすことがあります。これを「熱性けいれん」といい、生後6か月〜5歳くらいまでのお子さんの5%以上が経験すると言われています。初めて見ると本当にびっくりしますが、ほとんどは5分以内に自然に止まり、後遺症もなく回復します。
けいれんが起きたら
①まず親が落ち着く:慌てたい気持ちはわかりますが、パニックにならないことが大切です。
②安全な場所に横向きに寝かせる:吐いたものが喉に詰まらないよう、顔を横に向けましょう。首元の衣服をゆるめてください。
③口には何も入れない:「舌を噛まないように」と口に物を噛ませるのは、呼吸を妨げる危険があるのでやめましょう。
④時間を計る:可能であれば、けいれんの様子を動画に撮っておくと、後で医師に伝えるときに役立ちます。
こんな場合は救急車を
- けいれんが5分以上続く
- けいれんが止まっても意識が戻らない
- 同じ日に2回以上けいれんを起こす
- 顔色が紫や真っ青のまま
- 初めてのけいれん(まず医療機関で診てもらいましょう)
夫婦で乗り切る!発熱対応の連携のコツ
子どもの急な発熱は、共働き家庭にとっては本当に大変ですよね。夜間対応から翌日の仕事調整まで、夫婦でどう乗り切るか、私たち夫婦が実践しているコツをお伝えします。
事前に「発熱マニュアル」を共有しておく
お子さんが元気なときに、発熱時の対応について夫婦で話し合っておきましょう。
- 体温計や解熱剤、経口補水液の保管場所
- #8000やかかりつけ医、夜間救急の連絡先
- 保険証やお薬手帳の場所
- 受診の判断基準(この記事を参考にしてみてください)
紙に書いて冷蔵庫に貼っておいたり、スマホで共有しておいたりすると、いざというとき慌てません。
夜間対応は「シフト制」で
夜中に何度も起きてお子さんの様子を見るのは、翌日の仕事にも響きます。わが家では「前半・後半」でシフトを分けて、交代で仮眠を取るようにしています。
どちらか一人に負担が偏ると、その人が倒れてしまいます。「お互いに寝られる時間を確保する」という意識を持つことが大切です。
翌日の対応も「どちらが」ではなく「どうするか」
「子どもの病気で休むのは妻」と決めつけないでください。どちらの仕事の状況がどうか、今回はどちらが対応できそうか、毎回対等に話し合って決めることが大切です。
可能であれば、半日ずつ交代で休む、在宅勤務に切り替えるなど、お互いの負担を分散する方法を考えてみましょう。
「ありがとう」と「大丈夫?」を忘れずに
発熱対応中は、親もピリピリしがちです。でも、相手への感謝と気遣いの言葉を忘れないでください。「夜中に対応してくれてありがとう」「疲れてない?大丈夫?」一言あるだけで、気持ちが楽になります。
まとめ
- 発熱は体が病原体と戦っている証拠。熱の高さだけでなく、お子さんの全体的な様子を見て判断することが大切
- 夜間でもすぐに受診が必要なのは、生後3か月未満の発熱、意識障害、呼吸困難、5分以上続くけいれんなど
- 水分が摂れていて機嫌が比較的よければ、翌朝の受診で大丈夫なことが多い
- 迷ったら#8000(小児救急電話相談)に相談しよう
- 夫婦で事前に対応を話し合い、負担を分け合う連携体制を作っておこう
小児科看護師として働いてきた私でも、わが子の発熱には毎回ドキドキします。でも、正しい知識と夫婦の連携があれば、必ず乗り切れます。
心配なときは遠慮なく受診してくださいね。一人で抱え込まなくて大丈夫ですよ。

コメント